令丈ヒロ子と言えば知る人ぞ知る児童文学の怪物。
私の世代ではないのだけれど2013年に20巻をもって完結した『若おかみは小学生!』は、いまだ図書館の児童書コーナーにあって、いつも誰かに貸し出されている状態。
『若おかみは小学生!』は昨年、映画化もされて映画もなかなかの高評価だった。
私自身は令丈ヒロ子世代ではないし、娘にも読ませてみたものの娘のツボではなかったらしく、私は令丈ヒロ子の児童文学に触れていないものの、評判だけは知っている。
「あの令丈ヒロ子が大人向けの作品を書いた」と評判になった『ハリネズミ乙女、はじめての恋』が意外と良かったので「あ。大人向けの2冊目が出てる」とウキウキ手にとってみたのだけれど、今回は物凄く残念だった。
読後、本を壁に投げつけたくなってしまったのは久しぶりだ。
今回の感想は全否定ディスり体制、しかもネタバレ全開で書くので、令丈ヒロ子が好きな方や、ネタバレNGの方は読まない方が幸せになれると思います。
良いことは1つも書きませんので、そこのところをどうかよろしく。
手をつないだまま さくらんぼの館で
この作品。もし児童書として10歳前後の読者を想定した物ならアリだと思う。10歳の私なら確実に泣いた。
だけど「大人向け」として発売するには無理があり過ぎる。先に結論をバラしてしまうけれど、要するに夢オチなのだ。「美しい物語は交通事故で眠っていた主人公の夢でした」って話だった。
あるカップルが交通事故に遭遇。男は生き残り、女は死亡。生き残った男が眠っている間に見ていた夢から物語がはじまって、ラスト「実は全部、夢でした。彼女は死んでました」みたいなオチになっている。
これ、令丈ヒロ子だから発売出来ているけれど、小説の新人賞なら確実にに第一次審査で落とされるヤツだと思う。夢オチと言ってもプロの作家だけあって、それなりの仕込みはあったのだけど、オチも酷いし内容もペラい。これを大人向けの作品として夜に出す出版社の売り出し方が気に食わない。
昨今の図書館は新刊本だと、帯も飾ってあったりするのだろうけど、この作品の帯はこんな感じだった。
- ラストあなたはきっと涙する
- 彼女は謎の少女に想いを託した
- 愛することを見失ってしったすべての年齢の人たちに届けたい、愛と希望と感動の物語。
なかなかの推しっぷりだけど、これが全て夢オチだったとしたらどうだろう?
ゴメン…私は無理だった。
ジュニア文庫ならアリだと思うのだけど、大人の小説としてはあまりも稚拙過ぎる。それとも昨今の大人は精神的に劣っているから、これもウケルと判断されてしまったのだろうか?
昨今は出版社不況で出版社が大変なのは分かるけれど、こんな商売をしていたら、いつか読者は離れてしまうと思う。
売り方について作者に罪はないと私は考えている。『ハリネズミ乙女、はじめての恋』が評判良かったので、出版社が二匹目のドジョウを狙ってしまったのだろうなぁ。
心底残念な作品だった。
だけど令丈ヒロ子の大人向けの新刊が出たら、とりあえず次も読みたいと思う。