今まで読んだ角田光代の作品の中では1番面白かった。直木賞受賞作とのこと。
専業主婦でハウスクリーニングの仕事を始めた子持ち女と、その会社の女社長の2人を中心にした物語。
「現代の女」を鮮烈に描いていると思ったが、男性がこの作品を読んで面白いと感じるのかどうかは疑問である。何かにつけて「女特有」の世界が基本になっているので、ちょっと小狭い感じがするのも事実だ。
対岸の彼女
結婚する女、しない女。子供を持つ女、持たない女。それだけのことで、どうして女どうし、わかりあえなくなるんだろう。
ベンチャー企業の女社長・葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始めた専業主婦の小夜子。二人の出会いと友情は、些細なことから亀裂を生じていくが……。
多様化した現代を生きる女性の姿を描く感動の傑作長篇。
アマゾンより引用
感想
この作品は「私たちの世代って、ひとりぼっち恐怖症だと思わない?」という台詞に集約されていると思う。
男性には分かり辛いかも知れないけれど「手を繋いでトイレに行く」という感覚……と言えば良いだろうか。
「友人」ではなく「仲間」を必要とする人達の話。グループ付き合いとか、公園デビューとか、女にはややこしい世界があるのだ。
実のところ私自身は「女特有のややこしい世界」と言うのが滅法苦手で、グループってものに所属した経験がほとんど無いので、この作品のヒロイン達の言い分は共感出来なかった。
「なんで、そんな詰らないことに悩んで人生をふいにしてるんだろう?」としか思えなかった。「たくさんの仲間」よりも「ごく親しい友人」がいたら、それで充分だと思っているのだ。
面白いと思ったのは「結婚した女」「結婚しない女」「仕事をする女」「仕事をしない女」は、立場が違うだけで分かり合えないと言う発想。
確かに、立場が違う人の環境や考えを推し量るのは難しい。だが、それだけで「分かり合えない」ってのは、どうかと思う。
作中に出てきた女達は「それは、立場云々以上に大人として稚拙なだけでは?」としか思えなかったのだ。
作者の周囲には「いい感じで大人になった女」がいなかったのだろうか? 私の周囲には自分とは立場の違う友人がいるけれど、だからって作中で書かれているほどに「分かり合えない」と思った事は1度もない。
分かり合えない人ってのは立場が一緒だろうが、どうだろうが分かり合えないし、違う世界に生きていたって分かり合えるときだってある。
私にはピンとこない作品だったが、こういう事で思い悩む女性が多いのも知っているし、そういう部分を上手く描けているなぁ……とは思った。
このテの感覚を強く持った人達は何かにつけて大変だなぁと他人事のように思った。