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嘘つき鳥 久世光彦 幻戯書房

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今頃になって久世光彦のエッセイを読む事になるとは思ってもみなかった。

久世光彦がこの世を去って10年以上経ってから、まだ読んでいない本を見つけるだなんて。どうやら没後に編集して出された本らしい。

一応新作の体だけど久世光彦がお好きな方なら「あ。このネタ知ってる」と言うような使い回しのネタが多いのだけど、遺稿集としてならアリだと思う。だって作者自身が監修していないのだもの。

そこのところは目をつむっていく方向で。

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嘘つき鳥

年をとると、嘘をつくぐらいのことで疲れる。―もちろん嘘の相手は、女である。遺されたエッセイ42篇。

アマゾンより引用

やはり久世光彦の世界は素敵だ。古き良き昭和がそこにある。

ちょっと薄暗いくて湿った感じのする日本家屋だったり、素敵な大人達が集う銀座だったり。

昔付き合った女との思い出、母との思い出、そして向田邦子との思い出。

書き散らしたものを引っかき集めてきました」って感じの1冊なので久世光彦が好きな方には是非読んで戴きたいと思うのだけど「エッセイが読みたい」ってだけの人にはあまりオススメ出来ない感じ。

久世光彦はエッセイも小説も大好きなのだけど、久しぶりに彼のエッセイを読むと彼に対する見方が変わって割れながら驚いた。

私の中の久世光彦はダンディで格好いいオジサマだった。

でも45歳になった今読んでみると「あれ? 久世光彦って駄目な人なのでは?」ってことに気がついた。

付き合っていた女性を妊娠させて逃げちゃった話とか、女手一つで母親が必死で育ててくれているのに勉強もせずに知れっと浪人しちゃってるところとか。女に奢らせたり貢がせたりしていた時代があったりしたところとか。

じっくり読んでみるとヒモ要素が半端ない。

ただ、それでも「当時はモテモテだったんだろうなぁ」って事は伝わってきた。そのテの男性が好きな女性って一定数いるものだ。

さて。久世光彦がヒモ系男子だった…ってところは置いておくとして。

独特のリズムのある日本語は読んでいて気持ちが良いし、昭和の風俗を書かせたら最高なのは間違いない。

きっと現実はそれほど良いものではないと思うのだけど、久世光彦の文章を通すとちょっぴり淫靡で魅力的に変化するから不思議だ。

それにしても、既にこの世からいなくなってしまった作家さんの新作(出版されたのは3年前だけど知らなかった)を発見した時の喜びったらない。

「えっ? なんで新作出てるの?」と困惑しながらも喜びに震えた。作家は死んでも作品は死なない。文学っていいもんだなぁ…と改めて思った。

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白い木蓮の花の下で
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