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ゼンマイ 戌井昭人 集英社

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面白かった。この作品、すごく好き。たぶん私は戌井昭人と波長が合うのだと思う。

戌井昭人の書く話って感動巨編でもないし、考えさせられる系でもないし、次から次へと話が転がっていく訳でもない。

主人公は「ちょっと駄目な男」が多い。今回の主人公も作者が得意とする「ちょっと駄目な男」だ。

この駄目さ加減は『男はつらいよ』の寅さんを連想してしまう。駄目っ子なんだけど、どことなく憎めない…と言うか。

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ゼンマイ

魔術団の女を探して、いざモロッコへ!!

残されたゼンマイの小箱をたよりに、昔の恋人をたずねて、オトコ二人の珍道中。見つけたのは、ひとりの女か、それとも人生か―。

アマゾンより引用

感想

今回の話を簡単に説明すると爺さんと若者が昔爺さんが付き合ってた女性を探しにモロッコへ行く物語…ってところ。

爺さんは運送会社の社長で若者はライター。若者はちょっとした事情から爺さんのお供としてモロッコに行くことになる。

前半は爺さんの昔話。かつて爺さんは『ジプシー魔術団』と言う興行のトラックの運転をしていた。そこで働いてたハファと言う名の女性と恋仲になるも、ハファは興行が終わると同時に日本を離れてしまう。

もともと2人は「その場限り」の関係だと承知の上で付き合っていたのだけど、爺さんは今頃になってハファと会いたくなった…って流れ。

『ジプシー魔術団』はサーカスのような、見世物のような興行で前半の昔話は「爺さんと愉快な仲間たち」って感じで進んでいく。

ヤクザだったり、チンピラだったり、詐欺師だったりと駄目な人間勢揃い。しかし義憤に駆られるような事件が起こる訳でもなく、悪い人間はアッサリ死んでいったりもする。

面白いと言えば面白いのだけど、よく考えてみると、どうでも良いような話がダラダラと続く。

後半は恋人探し。男2人旅。しかも親子以上に年齢が離れている2人なのに、何故かやたら楽しげで『水曜どうでしょう』とか好きな人は楽しめるのではないかと思う。

ただ、これもよく考えてみると、どうでも良いような話がダラダラと続く。

そしてだらしなく終わるのかな…と思っていたら、ラストは意外にも綺麗にまとまっていた。

結構いい話だ。オチを書いてしまうと興醒めなので書かないけれど、読後感はかなり良い。なんとなく2人と一緒に自分も旅をしているような気になってしまった。

私はすごく好きなのだけど「面白いから是非読んで下さい」とは言えない感じ。

きっと、戌井昭の持ち味である「チンピラ感」と言うか「ちゃらんぽらん感」が嫌いな人もいると思う。

だけど戌井昭は作者の描く独特のゆるっとした空気が大好きだ。新作が出たら次も是非読みたいと思う。

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