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ニューカルマ 新庄耕 集英社

作者の作品を読むのはこれで2冊目。

初めて読んだ『狭小邸宅』は「上手いなぁ」と思ったものの、そこまで面白いとは思えなかった。だけど今回は面白かった。作者は目に見えて成長している。着実に上手くなっていると思う。

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ニューカルマ

大手総合電機メーカーの関連会社に勤務するユウキ。かねてから噂されていたリストラが実施され、将来に不安を募らせる中、救いを求めた先はネットワークビジネスの世界だった。

成功と転落、失ってしまった仕事と友人…。あげく、ユウキが選び取った道とは―。

アマゾンより引用

感想

前回は住宅営業マンが主人公だったけれど、今回の主人公はネットワークビジネス(ネズミ講)にハマってしまった青年。ネットワークビジネスに手を染めなければ普通の人生を歩んでいけそうな善良な若者。

そんな彼が堕ちていく過程が鮮やかに描き出されていて「なんだか、ちょっと分かるかも」と言う気持ちになってしまった。

ネットワークビジネスに騙される人って「いかにも」な感じで欲の皮の突っ張った人も多いけれど「どうしてこの人か?」と吃驚するような人も少なくはない。主人公は後者に属するタイプ。

ネットワークビジネスって誰しも1度や2度は誘われた事があると思う。

私も何度となく声をかけられたし、友人でハマっちやった人もいる。ちなみに私の友人はネットワークビジネスの養分となって途中脱落していったクチ。決して悪人ではなかったけれど、騙されやすいお人好しではあった。

この作品を読みながら「そう言えば、あの時もあんな感じだったなぁ」と微妙な気持ちになってしまった。

作品の中に出てくるネットワークビジネスの方法は、ネットワークビジネスのテンプレートなのだと思うのだけど「そうそう。こんな感じ」と思える箇所が多かった。

文書に癖がなくて読みやすいのでストレスなく読み進める事が出来る。ノリだけで言うと池井戸潤とか浅田次郎っぽい。テンポが良くてグイグイいける。

しかし残念なのが池井戸潤とか浅田次郎ほどのカタルシスは無いのだ。

『狭小住宅』の時も感じたのだけど、いかんせんオチが弱い。最後にビシッっと決めてくれたら名作なのに「えっ。あっ。もう終わり?」って感じで終わってしまっている。

一応、まとまってはいるものの、ラストがパッっとしないので「そこそこ面白かった」と言う以外の感想が出てこなくなってしまうのが惜しい。

しかし考えてみると、名作でもオチがパッっとしない作品なんて山ほどある。

「あえてモヤモヤした終わり方」とか「問題は解決していないし誰も幸せになっていないし、結局なんだったの?」と言う終わり方とか。

そう言えば桐野夏生の作品はそんな感じの物が多い。それなのに桐野夏生は出す作品、出す作品、高評価を得ている。それは桐野夏生の作品は圧倒的に面白いからだと思う。

桐野夏生は毎度「モヤモヤしたラストだったけど面白かったし、まあイイか」と思えてしまうパワーで押し切ってしまっているのだけれど、

残念ながら作者の描く作品はそこまでの境地には至っていない気がする。

物語自体は凄く面白いので残念でならない。

もう少し人間のドロドロした部分に突っ込んでいってくれたら物語に「面白かった」だけでは終わらない厚みが出ると思うのだけど。

……とは言うものの前作よりも確実に面白くなっているので、次回作に期待したい。

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白い木蓮の花の下で
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