なるほど…そうきたか。やっぱり、そうだったか……とて思わず、ほくそえんでしまった1冊だった。
いしいしんじの描く作品は哀しいまでに優しい世界が多くて、あまりに綺麗な世界だから「根っから優しい人なんていないよね?」と、心のどこかで少し意地の悪い推測をしていたのだけれど、これは作者の持つ闇の部分が色濃く繁栄された短編集だった。
白と黒の鳥
ザックリとこんな内容
- 恋愛要素が強めの短編集。
- はつかねずみとやくざ者の恋や山奥の村で繰り広げられる数日間の出来事など。
- これまでのいしいしんじ節からすると、軽くダーク路線。
感想
創作をする人(たとえば小説家)であろうと、それを享受する人(たとえば読者)であろうと、完璧な人間なんていやしないのだ。
優しい物語を書く人にもダークな世界があって当然である。暗黒具合でいくならば、中島らもの世界に通じる駄目っぷりがあったように思う。
だが、しかし。私が作者に求めているのはダークな世界ではないらしい。
正直なところ、個人的に短編集は好きになれなかった。
あえて良かった作品を上げるなら双子の姉妹が主人公の物語と、馬鹿で真摯な肉屋の主人の物語くらいだろうか。それ以外は、いただけなかった。
私は作者の描く馬鹿としか言いようのないロマンティックで、胸キュンな世界が好きなんだなぁ……と改めて感じた1冊だった。いしいしんじの他の作品の感想も読んでみる