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呪文 星野智幸 河出書房新社

予想外に面白く良い意味で胸くその悪くなる作品だった。

作者の書く作品を読むのは初めてで、さらに言うなら前知識が全くなかったのもあって、話の持って行きかたが予想外過ぎて驚かされた。

軽く飲みたいな…と思って居酒屋にふらりと入ったはずなのに、中に入ったら給仕がいるようなフランス料理店で、なんだか分からないけれどフルコース食べていた……と言うくらいの展開だったのだ。

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呪文

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さびれゆく松保商店街に現れた若きカリスマ図領。

悪意に満ちたクレーマーの撃退を手始めに、彼は商店街の生き残りと再生を賭けた改革に着手した。廃業店舗には若い働き手を斡旋し、独自の融資制度を立ち上げ、自警団「未来系」が組織される。

人々は、希望あふれる彼の言葉に熱狂したのだが、ある時「未来系」が暴走を始めて……。揺らぐ「正義」と、過激化する暴力。

この街を支配しているのは誰なのか? いま、壮絶な闘いが幕を開ける!

アマゾンより引用

感想

物語の舞台は世代交代が上手くいすがにシャッター商店街になりつつある古びた商店街。主人公はその商店街でメキシコ風のサンドイッチ(トルタ)の店を開業した霧生と言う若者。

霧生は商店街の若きリーダー図領に何かと支えられつつ、経営不振の店で頑張っている。「ああ…これは若者達が奮起して商店街が再生していくハートフルなお話なのだな」と思わせる展開。

ところが主人公が頼りにしている図領が経営するお洒落居酒屋のような店に質の悪いクレーマーか訪れる。

クレーマーはSNSやツイッターを駆使して図領の店だけでなく、商店街自体も窮地へ追い込んでいく。「なるほど。今時のネット社会の闇を描いた作品なのだな」と思わせておいて、ここでまた話が一変。

図領はやられっぱなしになっているような男ではなく、果敢に自分から仕掛けていく。実はここからが物語の本筋。私は、あれよあれよと言う間に物語に引き込まれてしまった。

よくよく考えてみれば『呪文』などというオドロオドロしい題名なのだから、ハートフルな物語ではるはずがなかった。人の悪意が滲み出るような嫌な話だ。

クレーマーの男のやり口も汚いし、そこから先の展開はもっと嫌な感じ。主人公が頼りにしていた図領を中心に彼を崇拝する人間が集まってくるのだけど、普通の感覚の人間からすると異常としか思えない展開になっていく。

「新興宗教にハマっちゃう人って、あんな感じなんだろうな……」と思ってしまった。

「ドキドキを味わう」と言う意味では面白い作品だけど、後味の良い作品ではない。

すごく面白かったけれど、文句を言わせてもらうなら鍼灸師の唐突な大活躍は、ちょっとあんまりだって事くらい。

一応、鍼灸師は物語の最初から登場するし、随所で絡んではいたけれどラストの展開はいささか都合が良過ぎる気がした。

とにかく凝った作りだし「嫌な感じ」がとても上手い。

作品の後半で「クズは死ね」とか「クズ道というは死ぬことと見つけたり」と言う言葉が何度も登場するのだけど、実際にネット上では気軽に「死んでくれませんかね」とか「死ね」みたいな言葉が安易に使われる。

私はそう言うノリは嫌いだけれど、作品の中で使われる「クズは死ね」と言う言葉もリアリティがあって嫌な感じだ。言葉の選び方がとても上手い。

人の良い主人公。意識高い系のリーダー。リーダーに従う狂信者。

どの人物も「こういう人いるよね」と思えるような人ばかりで、そんな中にオドロオドロしい悪意が広がっていくところが恐いし気持ち悪い。

好き嫌いを問われると微妙なところだけれど、間違いなく面白かったし、今年出版された小説の中では力作の部類に入るの間違いないと思う。

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白い木蓮の花の下で
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