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小箱 小川洋子 朝日新聞出版

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小川洋子『ことり』以来、7年ぶりの長編小説。

小川洋子は短編よりも長編の方が面白いと思っているので『小箱』を読むのを楽しみにしたいた。

凄いな…小川洋子。2019年11月時点で小川洋子は57歳とのことだけど、切れっ切れな作品をぶつけてきた。

『小箱』は「亡くなった子達の魂云々」と言う設定になっているけれど、実にフェチ…と言うか控えめに言って相当キモい。(褒め言葉)

たぶん…だけど、小川洋子自身が好きなも設定を盛り盛りと詰合せたのだと思う。

こんな設定、中堅作家さんだったら思いついても書かせてももらえなかったと思う。

小川洋子は『博士の愛した数式』以降、ハートフル路線が続いていたけど、個々数年吹っ切れたのか、なんだかちょっと目が離せない。

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小箱

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朝日新聞出版
ザックリとこんな内容
  • 主人公は廃園になった幼稚園で暮らす小説家。
  • 幼稚園の講堂にはガラスケースに収められた亡くなった子どもたちの魂。
  • この世界には「新しい子どもは産まれない」と言う設定。
  • 登場人物は息子を亡くした従姉、歌声でしか会話できないバリトンさん、竪琴をつくる歯科医…と個性的。
  • 淡々としたタッチで描かれた小川洋子の摩訶不思議世界。

感想

小川洋子の世界を語る時、多くの人は「静謐な世界」と言う表現を使う。

「静謐な」と言う言葉は小川洋子ワールドに似合うとは思うのだけど『小箱』は静謐を通り越して狂気に近い気がする。

  • 遺髪を植毛した人形
  • 遺髪で作った竪琴
  • 死んだ赤子のおしゃぶりをペンダントにする女性

遺髪とか遺骨を嬉々として描く小川洋子は控えめに言ってキモい。(褒め言葉)

特に冒頭のカマキリをキャラメルの箱に入れる場面は気持ち悪さマックスと言っても良いと思う。引用すると、気分の悪くなる方がおられそうなので控えるけれど、あれは「子ども特有の残酷さ」なんてレベルの描写ではない。

小川洋子の描く世界はファンタジックで絵本調なので、うっかり受け入れてしまいがちだけど、冷静に考えてみると相当イカレている。

ちょっとみなさん。『妊娠カレンダー』や『ホテル・アイリス』を書いた小川洋子の残酷性が完全に復活しちゃってますよ。

主人公の小説家がバリトンさんの恋人の手紙を解読して文章にする場面はもはや性的なプレイとしか思えない。あれ…たぶん、あちらの業界の方からすると完全に「ご褒美」だと思う。

美しくて上品な文章なのにエロい感じが素晴らしかった。

……と。絶賛しておいてなんだけど、個人的には死体系のネタは苦手なので再読はしない。素晴らしい作品だとは思ったけれど、私の好みからは少しズレているのだ。

ただ、今の小川洋子がノリノリなのは間違いないし、次の作品も楽しにしている。

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