『乱舞』は私の病床での愛読書『連舞』の続編で、日本舞踊の家元夫人となったヒロインが、突然の事故で夫を失ったところから物語がはじまる。
だいたいからして「続編」というのは、ツマラナイのが相場だが、すっとこどっこい、そうじゃない。正編にも負けず劣らず面白いのだから、素敵である。
乱舞
日本舞踊会の中心的存在として隆盛を迎えた梶川流。
将来も安泰に思えたある日、家元猿寿郎が事故死した…。そして家元の血を継ぐ隠し子たちが、未亡人となった秋子の前に現れる。
妹の千春や母の寿々までもが跡目を巡り弟子たちと争いを繰り広げるなか、梶川流を守るため、秋子が選んだ道とは―。
因襲の世界で懸命に生きる女たちを描いた波瀾万丈の人間ドラマ。『連舞』に続く傑作長編小説。
アマゾンより引用
感想
人間の成長は留まることを知らないのだなぁ……と思わせてくれる作品だった。
芯は通っているものの、どこか弱々しかったヒロインが、目を見張るはどに逞しくなっていくのだ。強く、そしてしたたかに。その成長は端で見ていて小気味良い。
そして何よりも、この作品で心打たれるのは「日本舞踊界」に生を受けたから、そういう環境にあったから踊っていたヒロインが、自らの意思で踊り、また踊りへの陶酔を得たところにあると思う。
ヒロインの本当の人生は、ここからはじまるのだ……と言っても過言ではないだろう。
有吉文学の魅力は「女」にあると思う。しかも「へこたれない」ってところがポイント。
華やかな世界に生きる女も、市井に生きる女も、彼女の描く女達は、みなそれぞれに強いのだ。そして私は彼女達の強さが好きだし、それを産み出した作者が好きだ。
私は死ぬまでに、あと何回この作品を読むのか想像もつかないけれど、これからも、きっと再読を重ねていくのだと思う。
乱舞 有吉佐和子 集英社