作者の和田裕美は小説家ではなく経営コンサルタントとのこと。ビジネス系の本をいつくか出していて、どれもベストセラーになったとのこと。私の読書の守備外の人なので全く知らなかった。
『タカラモノ』は一応、小説の形を取っているけれど、本質的にはコーチング本とかハウツー本に近いタイプの作品。好きか嫌いか…以前に、中高生の女の子に読ませたいおきたい作品ではあった。
タカラモノ
- ママはときに男と出奔する、どうしようもない母親
- ママには夫と娘が2人。スナックを経営しつつ、恋に走るタイプ
- 自由奔放でワガママ勝手に生きているように見えるママだが、誰もが彼女を好きになる
感想
西原理恵子の世界を踏襲したような作品だった。一般的に言われる「良いお母さん」ではない。まっとうな大人目線で読むと「無いわぁ~」「それってネグレクト(虐待)だからな」みたいなエピソードもある。
だけど「生きる知恵」のような物がギッシリ詰まっていて、読後に高校2年生になる娘に買ったくらいには「若い女の子(特に真面目系の子)」に読んで欲しい」と思う作品だった。
私が感心したのはママの恋愛観と男性を見る目だった。私は若い頃から恋愛下手でそもそ恋多きタイプの人間ではないので、自分の娘に経験談を語ることが出来ない。長く生きていれば周囲にいる恋多き女から様々な話を聞くことはあるけれど、しょせんそれらはまた聞きに過ぎない。娘に自分の言葉で「こういう恋愛はヤバイよ」とか「こういう男は地雷だぞ」みたいな話が出来ないのだ。
恋愛で痛い目にあったきたママの言葉は「なるほど」と頷く部分が多かった。実はそれって当たり前のことばかりなのだけど、普通な人が語るよりも破茶滅茶な人生を生きてきたパンチのある人間の口から語られると説得力が増すのだ。
そしてママが超ポジティブシンキングなのがとても良い。
- 幸せになりたいんやったら、誰かのせいにしたらあかん。誰かに頼んでもあかんねん
- できる、できひんで選んだら、なんも成長できひん
……とか、これもまた当たり前のことではあるものの、なかなか口に出して言えないし、その辺にいる普通のオバチャンが言ったとて説得力が無い。破天荒なキャラが語ることで、説得力が増していた。
それはそれとして。作者の和田裕美は京都出身とのことだけど、舞台を京都に据えてママにバリバリの京都弁を喋らせていたのには辟易してしまった。私。バリバリの大阪人(52歳)だけど、周囲にバリバリの大阪弁使う人っていないのだ。京都も大阪も方言は使うし訛もあるけど、TVで聞くような言葉を使ってる人は見掛けない。
昭和の頃ならまだしも「いつの時代の話だよ?」と首をかしげるような関西弁が繰り出されていたのには興醒めした。
それはそれとして。娘には「この本。全部が最高とは言わないけれど、恋愛エピソードは参考にしたらいいよ。お母さんには語れないけど大事なことが書いてあるから」と言っている。
『タカラモノ』は文学作品としても小説としてイマイチかも知れないけれど、若い女性のコーチング本としてはアリだと思うし、こういう形の本も面白いな~と思った。
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