『成瀬は信じた道をいく』は2024年本屋大賞を受賞した『成瀬は天下を取りにいく』の続編。『成瀬は天下を取りにいく』では中学生、高校生時代の成瀬が描かれていたけれど、今回は高校から大学時代の成瀬の物語。
前作からの登場人物に加えて、新たな登場人物も投入されている。成瀬の破天荒さは相変わらずでその勢いは止まらない。
成瀬は信じた道をいく
- 『成瀬は天下を取りにいく』の続編で舞台は滋賀県、大津市膳所。
- 成瀬あかりを中心に「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー(をやめたい)主婦、観光大使の女子大生など新しい登場人物達が登場する。
- 京大受験、バイト、観光大使の仕事など成瀬の挑戦は止まらない。
感想
『成瀬は天下を取りにいく』からスタートした成瀬の物語は主人公の成瀬に魅入られた人が多いと思うのだけど、むしろ私は周囲の人達に注目している。彼らは成瀬の行動に驚き翻弄されるのだけど、第三者視点で物語を追っていると「いやいや。あなたも相当面白い人間ですよ?」としか言えないのだ。
今回はどの章にも「思い込んだら一直線」な人間が揃い踏み。
- 成瀬に心酔する小学生
- 高知からきたYouTuber(京大受験生)
- クレーマー主婦
- 観光大使の女子大生(実は撮り鉄)
…と。どの章もそれぞれを主人公にして小説が1本書けてしまうほどにキャラクターが濃い。
基本的にはどの話もドタバタ展開で成瀬に振り回される形で進んでいくけれど、どの章も章の主人公達がそれぞれ成長しているとこが素晴らしい。それぞれはみな性格が違っているけれど、基本的に善人なのも良いと思う。
今回「ちょっと異質だな」と思ったのはクレーマー主婦のくだり。この章だけは他の章とは雰囲気が違っている気がした。
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リアル寄り路線で「実際にありそうだな」って感じはあるものの、他の章に較べると爽快感が低い…と言うか、ふんわりとした悪意を感じた。
クレーマー主婦は成瀬と出会ってことで変わった部分もあるけれど「吹っ切れた」とか「成長した」みたいな感じではない。妙にモヤモヤ感が残ってしまった。成瀬シリーズは基本的に日の当たる人達しか描かれていないけれど現実の世界ははそんな人達ばかりではない。「もしかしたら宮島未奈はこういう路線が好きなのか?」とか「違うアプローチの作品を書きたいのかな?」なんてことを思ったりした。
それはそれとして。今回も楽しく読ませてもらった。もし成瀬シリーズの続きが出るなら読んでみたいし、宮島未奈が成瀬シリーズ以外の作品を出すのであっても是非読んでみたいと思う。