読後、不愉快な気分にさせられた作品だった。
破綻した家族の話と言うべきか、それとも自分を見失った女の話と言うべきか。あるいは母と決別する娘の話と言うべきか。
私の感性に全く合わない本だった。
見覚えのある場所
結婚をしないまま、娘・千草を産んだゆり子。スーパーのパート勤めの間、千草は母・菜穂子のもとに。
父が出ていったあとに一人暮らす母のいる家は、ゆり子の「見憶えのある場所」だった。千草の姿に重なるように家族の日々と忌わしい記憶が蘇る。
母はゆり子と千草の生活にかかわるうちに、次第に常軌を逸していく…。
母と娘の確執、それぞれが抱える苦悩を丹念に描く注目の小説。
アマゾンより引用
感想
シングルマザーのヒロインと、自尊心が強くて「昔は完璧なキャリアウーマンだった」専業主婦の母親との関係をメインにして物語が進んでいく。
ヒロインの父親は突然、家を出てしまって母親は夫のいない家で、ずっと完璧な専業主婦として生活している。
ヒロインの母親はまったくもって嫌なタイプの女だった。「人を愛することを知らない女」とも言えるのだけど、ヒロインと母親の間には拭い難い確執が横たわっていて。
その辺が小説のテーマの1つなのだと思う。
が、いささか描ききれていない感が。色々と詰め込みすぎて1つのことに対する印象が散漫になってしまったようだ。
私自身、昨年娘を産んでいるので「母親と娘の関係」には興味があるのだけれど、この小説を読むと親子とか家族とかいうものの絆なんて、まやかしでは無いかと思えてきてしまう。
正直なところ登場人物の誰にも共感が出来なかった。
「どうして、もっと単純に生きられないのかなぁ?」と首を傾げること数回。
登場人物達は全員、マイナス思考過ぎるように思うのだ。親も親だし、子も子だし。「幸せになりたい」と願う力が弱過ぎて、読みながらウンザリしてしまった。
ラストは一応、綺麗にまとまっているように思うのだけど、登場人物達は誰1人幸せになれないような気がする。
私は良い母親でもなければ、素敵な女性でもないけれど「まぁ、そこそこに楽しい家庭」を築いていきたいと思う。
そして自分の娘とも「それなりの母娘」でいたい。もっとも「普通が1番難しい」ってことは承知しているつもりだけれど。
色々な意味で「少しハズレちゃった人達」の話なのだと思う。その「少し」が案外重たくて、悲劇を生む訳なのだけど。
とにかく読んでいてウンザリした1冊だった。