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猫と庄造と二人のをんな 谷崎潤一郎 新潮文庫

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谷崎潤一郎の『猫と庄造と二人のをんな』は若い頃に読んでいるけれどアマゾンオーディブルで聴き直してみることにした。最近、ちょっと本の当たりが悪いのだけど、こういう時こそ定番小説を読み直す(聞き直す)ことが出来るのはありがたいことだ。

若い頃に『猫と庄造と二人のをんな』を読んだ時は、なんだか物足りない気がしたけれど、改めて触れてみて面白さを感じてしまった。

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猫と庄造と二人のをんな

ザックリとこんな内容
  • 金物屋の主人である庄造と前妻の品子、現在の妻の福子。そして雌猫のリリーが繰り広げる物語。
  • 離婚して追い出された品子が「リリーをを譲って欲しい」という手紙を出すところから物語がはじまる。
  • 福子は自分以上にリリーが夫に大事にされている状況が気に食わず、庄造に「譲ってあげなさい」と言い、庄造は猫を品子に譲ることに同意する。
  • リリーは以前にも他人に譲られたことがあったが、その時も自らの意志で庄造のもとに戻って来たので、彼は今回もそうなるだろうと期待していた。
  • 品子のもとに到着したばかりのリリーは品子に懐かなかったが、次第に両者ともに打ち解けるようになり品子は猫とはこんなにも可愛いものかと思う。
  • 庄造はリリーが恋しくてたまらず品子の留守中にこっそりと家を訪ねるが…

感想

『猫と庄造と二人のをんな』は谷崎潤一郎が50歳の時に書かれた作品とのこと。エロ度合いが低いので、なんとなく谷崎潤一郎後期の作品かと思っていたけれど『細雪』よりも前に書かれていた。

作品が書かれた年代を見るとエロ度の高い『刺青』とか『少年』とか『痴人の愛』は比較的若い時代に書かれているのに対して50歳以降は『細雪』だの『台所太平記』だのと橋田壽賀子的ファミリードラマ的な作品にシフトしている。(晩年に書かれた『瘋癲老人日記』は別格だけど)

『猫と庄造と二人のをんな』はエロ度合いが低く、作風が変わる過渡期に書かれたのかも知れない。

「エロ度合いが低い」と言っても、そこは谷崎潤一郎なのでなんとなく卑猥ではある。エロスの対象が人間ではなく猫だった…ってだけの話。猫と人間のやり取りはなんとなくエッチ臭くて谷崎潤一郎味を感じるけれど、どちらかと言うと題名が示す通り、猫に魅了されて振り回される人間達のドタバタ劇の印象が強い。

谷崎潤一郎と言うと「マゾヒズム」の思想が切っても切り離せないのだけど『猫と庄造と二人のをんな』は猫が主人で人間が奴隷…って感じ。私は猫を飼ったことがないのだけれど、猫好きな人ならグッとくるんじゃないかと思う。

それにしても谷崎潤一郎の小説は「自分の好きを目一杯詰め込みました」みたいな感じがあってとても良い。だらしない中年男が美人に好かれるだなんて、大人のラノベとしか思えない設定を知れっと作っちゃうの凄いよなぁ…と感心してしまった。

そして自分を好いてくれる美人がいてもなお「猫の方が大事。猫に仕えたい」みたいな描き方をしちゃうあたり、谷崎潤一郎って感じ。

以前読んだ時はエロ度が低くて満足出来なかったのだけど、今回は谷崎潤一郎作品を年代順に並べてみたりしたことで、谷崎潤一郎作品群の中での『猫と庄造と二人のをんな』の立ち位置を知ることが出来て良かった。

とりあえず、谷崎潤一郎が好きじゃなくても猫好きの人なら楽しめるので作品だと思う。

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