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映画『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』感想。

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『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はTVアニメとして放送されていた『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の劇場版アニメ。『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の映画化は2回目(前作は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』)

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』は映画館で観たけれど、今回は金曜ロードショーで放送されていたものを録画視聴した。

私は根っからのヲタクで京都アニメーションは大好きだけど『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はどうにも好きになれなかった。

以前映画化された『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』の時は物申したいところはありつつも「良作だと思う」と書いているけれど、『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』については盛大にdisっていくので、ファンの方が感想を読むのはご遠慮戴いた方が良いかも知れない。

またネタパレ込の感想なのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

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劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

映画:劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン
原作 暁佳奈
監督 石立太一
脚本 吉田玲子
キャラクターデザイン 高瀬亜貴子
音楽 Evan Call
制作 京都アニメーション
製作 ヴァイオレット・エヴァーガーデン
製作委員会
配給 松竹
封切日 2020年9月18日
上映時間 140分

あらすじ

主人公のヴァイオレットは元孤児で戦場で「武器」と称されて戦う存在として育てられた。そのため、ヴァイオレットは人間らしい心を持たないまま成長してしまう。

しかしヴァイオレットはギルベルト少佐の導きによって人としての心を掴んでいく。

戦いの最中、ギルベルト少佐は死亡。ヴァイオレットは戦場で両腕を失い、自在に動く義手を付ける事になる。

退院したヴァイオレットは、ホッジンズの下で自動手記人形(手紙の代筆屋)としてC.H郵便社で働きはじめる。

ヴァイオレットはギルベルト少佐の最後に残した言葉「愛してる」の意味を知りたいと願うが、いまだにその意味を掴めずにいる。

……ここまでがTVアニメで放送されていたザックリとした設定。

ヴァイオレットがクラスライデンでも電話が普及しはじめたが、ドールの仕事が完全になくなった訳ではなくヴァイオレットは忙しく過ごしていた。そんな中、ヴァイオレットは病気で入院中の少年ユリスから「自分が死んだら家族に渡して欲しい手紙」の代筆を依頼される。

そんなある日。ホッジンズは宛先不明の手紙の中にギルベルト少佐の筆跡を発見。ホッジンズはヴァイオレットと共に手紙が出されたエカルテ島に向かった。

ギルベルト少佐は戦争で左目と左腕を失くした後、病院を出てこの島に住み着いていた。

ヴァイオレットはギルベルト少佐の家を訪ねるが彼女に負い目のあるギルベルト少佐は再会を頑なに拒否する。ギルベルト少佐に拒否されて哀しみに暮れるヴァイオレットの元にユリスが亡くなり手紙が届けられたとの知らせが入る。

ヴァイオレットは自分の想いを込めた手紙を書く。そしてその手紙を島の少年に手紙を託し、ギルベルト少佐との別れを決意する。

ヴァイオレットからの感謝の言葉が綴られた手紙を読んだギルベルト少佐は船着き場に走る。

少佐の呼ぶ声を聞いたヴァイオレットは船から飛び降り、ようやくギルベルト少佐と再会できたのだった。

「泣かせる」ことが前提の物語

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は今回の劇場版だけでなくTVアニメの頃から「泣かせる」ことを前提とした物語が展開されがちだった。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は「誰か殺しときゃ泣くだろ?」とか「愛ゆえに誰かが犠牲になれば泣くだろ?」くらいの勢いで毎度、泣かせにかかる物語が多かったのだけど、今回の依頼者は「余命いくばくもない少年」って設定だった。

「死ぬゆく病人が家族のために手紙を依頼する…ってTV版でもやったよね?」

素直に楽しめた人もいるだろうけど同じネタを突っ込んでこられて辟易してしまった。しかもTV版の依頼者は大人(幼い娘を持つ母親)だったけれど、今回は少年だった。

すっごく意地悪な見方で申し訳ないけど「女、子どもを殺さないと感動的な話を作れないの?」くらいの気持ちになってしまったよね。

薄幸な少年が書いた健気な手紙…設定だけで泣けるけど死にネタはシリーズで2回使って良いとは思えなかったのだ。死にネタ好きな人には申し訳にいけど創作物として安直だと思う。

ギルベルト少佐がクズ過ぎた

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はのテーマはTV版の頃から「ギルベルト少佐に『愛してる』を伝えたい」って事だった。

ヴァイオレットは戦場で別れたきり生死不明となってしまったギルベルト少佐が生きていると信じていて、ギルベルト少佐から「愛している」と言われたことを考え続けている。

戦争孤児のヴァイオレットは、その生い立ちゆえに心の成長に歪みがあり、ギルベルト少佐から「愛している」と言われても、その意味を理解できなかったのだ。しかしヴァイオレットも様々な経験をすることで「愛している」の意味を知り、自分もギルベルト少佐に「愛している」と伝えたいと思っていた。

ところが…である。

ヴァイオレットがずっと想い続けていたギルベルト少佐は良い男ではなく、なかなかのクズ野郎だったのだ。

そもそもの設定として。ヴァイオレットとギルベルト少佐が出会ったのはヴァイオレット10歳。ギルベルト少佐25歳。年の差にして15歳。現代日本に置き換えると社会人の男が小学生女子に特別な感情を抱いてしまった…ってこと。まあまあにヤバイ。

…だがしかし。年の差には目を瞑ろうとしよう。

日本には『源氏物語』があるじゃないか。光源氏と紫の上の関係も冷静に考えてみれは「無いわぁ~」な設定。愛は年の差を超えるのだ…ってところで、そこのところは気にしない方向にしても良い。

ギルベルト少佐がクズだと感じてしまった…って本質はそこじやない。

自分が愛した女が戦いで両腕を失ってしまった事に良心の呵責を感じてしまったギルベルト少佐は戦争が終結した後に名前を変えて身分を隠してひっそりと暮らしていた。

風のうわさに母親が死んだ事を知っても完全スルー。ヴァイオレットが1人で頑張っていた事を知ってもスルー。

ただ、ひたすらに自分の心を守ることだけに専念して、自分本位に生きていたのだ。「自分の行動によって1人の少女を不幸にしてしまった」と言う事実は確かに重い。

「そんな経験をしたら、ちょょっぴり精神的な部分で駄目になっても仕方ないのでは?」って意見もあると思うのだけど、ここで似た設定の名作漫画のことを思い出してみたい。

相原裕『GUNSLINGER GIRL』でも「兵器として生きる少女と上官」が描かれている。

『GUNSLINGER GIRL』の中のフラテッド(兄弟)設定もヴァイオレットとギルベルト少佐の設定とほぼ動揺で上官は罪の意識に苛まれることになる。

しかし『GUNSLINGER GIRL』の上官達はどんんなに苦しくても、良心の呵責を感じても、葛藤の末に自分が兵器として育てた少女と最後まで共に生きる(死ぬ)道を選んでいる。

一方、ギルベルト少佐は最後の最後まで自分の意思で動くことが出来ず、自分への愛を打ち明けてくれるヴァイオレットだけでなく、親友や実兄の後押しを受けて「こりゃ諦めるしかないな」と四方八方抑えおおられたとこで、やっとこさっとこ、ヴァイオレットを受けている。

「自分の行動によって1人の少女を不幸にしてしまった」と言う気持ちは分からなくもないけど自分のしてきた事に対する責任を果たそうとしないギルベルトは自分本位でヴァイオレットだけでなく、友人や家族等の「相手に対する思いやり」が一切感じられない。

「自分さえ良ければ良い」って思考の男…クズでなくて何なんだよ?

ヴァイオレットはどうしてクズを好きになったのか?

さて。ではどうしてヴァイオレットはクズとしか思えないギルベルト少佐を好きになってしまったのか?

「刷り込み」とか「ひな鳥効果」ってヤツだったのだと思う。ギルベルト少佐に出会うまでヴァイオレットは人間としてあるべき教育を受けておらず、だからこそ「愛している」と言う言葉も認識できない状態だった。

そんなヴァイオレットが「愛している」を理解するのキッカケになったのがギルベルト少佐…って設定。玉子から孵化した雛鳥が初めて目にした物を親であると認識してしまうあの効果と同様だったのだろう。

また「刷り込み」とか「ひな鳥効果」が無かったにしても、世の中はに一定数「クズ男ほど好きになってしまう体質の女性」が存在するの「まぁ…好きになっちゃったんだから仕方ないよね」と言うしかない。

ヴァイオレットを愛でるためのアニメ

ここまで盛大にdisってきたのだけど私は「じゃあ『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』がクソアニメなの?」と聞かれたら即答で「NO」と答えることができる。

映像美の素晴らしさは流石としか言いようがないし、ヒロインであるヴァイオレットの可愛らしさは完璧だった。

思うに。『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はヴァイオレットを愛でるためのアニメなのだと思う。「ヴァイオレットちゃん可愛いなぁ~」ってところだけは保証する。

だけど映像美とかヴァイオレットの可愛らしさ以外の要素については残念ながら1ミリも共感出来なかったし、少なくとも物語としてはレベルの低い部類に入ると思う。

私には『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が絶賛された理由がまったく理解できない。

「人の好みって色々あるよね…」って事で、みんな違ってみんないいんじゃないかな…たぶん…知らんけど。

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