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流 東山彰良 講談社文庫

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『流』は第153回直木賞受賞作。北方謙三に「20年に1度の傑作」と言わしめ、満場一致で直木賞が決定した…とのこと。

ちょい前に李琴峰の『観音様の環』を読んだこともあって、私の意識がなんとなく意識が台湾に向いていて、台湾にルーツを持つ作家さんの台湾を舞台にした小説…って事で読んでみた。

「20年に1度の傑作」と言われるだけあって流石の読み応え。台湾についての知識が無くても充分楽しむことができた。

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ザックリとこんな内容
  • 1975年の台北で主人公、葉秋生の祖父は何者かによって殺された。
  • 祖父は中国から台湾に渡った男で「不死身」と呼ばれるような豪傑だった。
  • それまで無軌道に過ごすしていた17歳の葉秋生は、自らのルーツに興味をつようになり、祖父を殺した男を探す旅に出る。
  • 台湾から日本、そして祖父が生れ育った中国大陸へ。激動の歴史に翻弄された人々の姿を鮮やかに描く。

感想

葉秋生と言う青年の成長を描いた青春小説(成長小説)だった。

祖父が大好きだった主人公は祖父を殺した人間と祖父が殺された理由を追いかけるのだけど、この作品は決してミステリ小説ではない。全編を通して中国と台湾、そして中国人について描きつつ、主人公の成長を描いていく。

「ちょっと昔の中国と台湾の歴史を知る」と言う意味でも面白く読むことができた。

台湾が中国から独立したいと考えていることについては誰もが知るところだと思うし、台湾が親日国であることなども、ふんわりと知ってはいたけれど「台湾で暮らす人の気持ち」とか「中国から渡ってきた台湾人の考え」がどうなっているか…なんて、今まで考えたこともなかった。

「戦争だから仕方がなかったんだ」と言ってしまえばそれまでだけど、主人公の祖父や『流』に登場する人々は誰もが戦争に翻弄されている。平和で穏やかな暮らしが出来てたら、主人公の祖父はあんに風に殺されることはなかったと思う。

主人公が悩み、もがきながらも逞しく成長していく姿が素晴らしかったし、何より物語に登場する中国人(台湾人)達の逞しさが凄かった。

「中国人はどこへ行っても中国人。どんな国にもチャイナタウンを形成して中国人として生きていく」みたいな事が言われるけれど、ホントそれ。中国は歴史の長い国だけどトップが変わるたびに国の方針が変わる。その変化に振り回されてきた歴史があるだけに中国人は逞しく生きる知恵を身につけたのかな…なんて事を思った。

それにして物語の上手さも凄かった。「えっ? これって作者自身の自伝なの?」と思ってしまうほどリアルな語り口(自伝ではない)だったし、波乱のエピソードを突っ込んでくるのが実に上手い。ヤクザ的要素があるかと思えば、切ない恋愛ドラマも入っていたりして飽きる瞬間が無かった。

東山彰良の作品を今後、読みたいかと言われると微妙ではあるけれど『流』は直木賞に相応しい作品だったと思ったし、良い時間を過ごす事が出来て感謝している。

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