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少年と犬 馳星周  文藝春秋

『少年と犬』は第163回 直木賞受賞受賞作。アマゾンオーディブルの朗読を聞いた。

飼い主とはぐれた1匹の犬の物語。犬は旅の途中で様々な人間達と出会いながら、彼らの人生に寄り添っていく…みたいな話。

私。よくよく考えてみたら馳星周の作品を読むのは初めてだった。馳星周と言えば『不夜城』とか『夜光虫』を書いた人…って認識でヤクザと暴力の世界を描く人だと思っていたので、今まで読みたいと思わなかったのだ。

『少年と犬』は一部にヤクザだの暴力だのが登場するものの、メインは決してそこではないし、ヤクザ物が嫌いな人でも楽しめると思う。少なくとも私は楽しく読めた。

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少年と犬

ザックリとこんな内容
  • 物語のスタートは2011年秋の仙台。
  • 震災で職を失った和正は認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えるために犯罪まがいの仕事をしていた。
  • ある日、和正はリガリに痩せた野良犬を拾う。犬の首輪には「多聞」という名が記されていた
  • 犬の多聞はしばらく和正と生活を共にするのだが……

感想

『少年と犬』は犬の多聞を軸にした連作短編形式の物語。馳星周は暴力の世界を描く作家さん…って事で暴力エピソードがいくつか登場するものの、基本的には市井の人達が主人公。

私は前評判を知らずに読んだ(聞いた)のだけど、人間と犬とのハートフルストーリーかと思いきや、3.11の震災がテーマの作品だった。犬の多聞は震災で飼い主を失っているし、多聞が出会う人間達の何人かは震災の影響を受けている。

『少年と犬』の中にはいくつかの犯罪行為が登場する。当たり前の話だけど犯罪は決して許されることではない。だけど犯罪者の過去がしっかり描かれているので、犯罪者に同情してしまうと言うか、犯罪者の気持ちに寄り添うような心持ちで物語を追っていた。

「罪を憎んで人を憎まず」と言う言葉があるけれど、犯罪者達も最初から悪い人間ではなかったし、むしろ個人としては良い奴だったりする。しかも犯罪者になった理由が「遊ぶ金欲しさ」とか「痴情のもつれ」なんて物じゃなくて、社会情勢だったり震災だったりして「犯罪行為は駄目だけど、その気持は分からなくもないな…」と思った。

1つ1つのエピソードが面白かったのも良かったけれど、それ以上に多聞の旅の理由が素晴らしかった。犬の多聞が旅をしていた理由についてはネタバレになってしまうので書かないけれど、犬が好きな人ならグッとくると思う。

ちょっと出来過ぎ…と言うか、ご都合主義的な展開ではあったものの、そこは犬に免じて許してやって欲しい。直木賞を受賞したのもなるほど納得。『少年と犬』みたいな路線で書いてくれるなら、馳星周の他の作品も読んでみたいな…と思った。

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白い木蓮の花の下で
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