NHK『今日の料理』の元プロデューサーが書いたエッセイ。
『今日の料理』の撮影話や、そこで出会った料理人達の話、働く主婦として暮らしてきた自分自身の料理についての話など、料理好きの人間にとっては読み応えのあるエッセイだった。
忙しい人こそ料理は上手い
「きょうの料理」をはじめ料理番組を30年担当し、この春、定年を迎えたNHKのディレクター若山慧子さんのエッセイです。
若山さんは24才で結婚し、仕事を続けながら、ふたりの子供を育て、まさに働く主婦を実践してきた人です。
外食嫌いの夫と結婚し、また自分の仕事柄、出来合いのお総菜は買わず、とにかく自分で食事を作り続けたといいます。ただ、自分なりに省けるところは省いた「手抜き料理」や「スピード料理」。必ずしも、「きょうの料理」のテキスト通りではなかったところもあるそうです。
アマゾンより引用
感想
テレビの料理番組は視聴する人によって、思い入れは違うと思うのだけど、私の場合は、なんとなく観ていて「これって、美味しそうかも…」と思った時に作る程度。
なので、テレビの料理番組って、あまりじっくり観たことが無かった。
しかしこの本を読むと、あの短い時間の中には沢山の人の知恵と工夫が詰め込まれているのだと知って、料理番組の見方を変えようと思った。
テレビ番組に限ったことではないけれど「物を作る」人の書く裏話的な読み物は、自分の知らない世界を垣間見させてくれるで、けっこう好きだったりする。
料理人さん達にまつわるエピソードは、どれもこれも感心して読んだ。「一流」と呼ばれる人達は、それ相応に学ぶべきところが多いのだなぁ。
自分の仕事に誇りを持ったプロというのは、どのジャンルであっても尊敬に値する。
私が個人的に面白かったのは作者自身と料理との係わり方について書かれた文章。
私自身、今は専業主婦として家族の食事を作っているのだけれど、自分に甘えて手を抜く部分も多く「もっと頑張らなきゃなぁ」と背筋が伸びる思いがした。
「忙しい」を言い訳にして料理の手抜きをするのは、台所を預かる人間の怠慢だなぁ…と反省しきり。なかなか徹底することは出来ないものだけど、もう少し努力したいと思った。
そして何より、この本を読んで良かったと思ったのは、エッセイの中にサラリと書いてあったレシピが素晴らしいってことだ。
試しに「生姜ご飯」を作ってみたのだけど、とても美味しかった。他にも「これって、作らなくても美味しいのが出来るだろうって分かるなぁ」と思ったレシピがいくつかあった。
たまには、こういう実用的な料理エッセイもいいものだと思う。家庭の台所に立つ人にお勧めしたい1冊である。