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遺品 若竹七海 角川ホラー文庫

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美術館や博物館が大好きな人なら、そこそこ面白読める作品だと思う。なにしろ主人公が「学芸員」なのだ。

主人公はゆえあって、ある女優(作家でもある)の私設資料館の学芸員におさまったところから物語ははじまっていく。

彼女の遺品(資料館的には資料)を整理しているうちに、主人公は遺品の主に惹かれるようになり、事件に巻き込まれていく。

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遺品

失業中の学芸員のわたしに、金沢のホテルの仕事が舞い込んだ。

伝説的女優にして作家の曾根繭子が最後の時を過ごし、自殺した場所。彼女のパトロンだったホテルの創業者は、繭子にまつわる膨大なコレクションを遺していた。

その整理を進めるわたしは、彼の歪んだ情熱に狂気じみたものを感じていく。やがて起こる数々の怪異。繭子の呪い? それとも……。

ひたひたと忍び寄る恐怖に次第に侵食されていく日常。絡み合う謎の正体は?!

アマゾンより引用

 

感想

ありきたりと言えば、ありきたりな展開なのだが、ホラー小説としては、ちょっと面白い要素が入っていて新鮮だった。

ホラーと切っても切れない関係である「エロス」と「タナトス」をあえて、排除してしまったところは「へー」である。

ホラー小説に登場する「魅惑の人」というのは、とかくステレオタイプになりがちで「エロスの匂いがないと駄目」というような印象があるのだが、淡白というかストイックな人を据えるというのも、悪くないように思う。

物語としては面白かったと思うが、ヒロイン達の生きる姿勢が好きになれなかった。

ヒロインに限らず登場人物全員、一事が万事「逃げる」ということを基盤にして生きているのだ。こういう言い方をすると身も蓋もないけれど「逃げ続けていたんじゃ、幸せになれないのも当然」という気になってしまった。

場合によって「逃げる」という選択肢が必要な場合もあるれけれど、逃げ続け、言い訳をし続けていては、愉快に暮らせる訳がない。

嫌だろうが、なんだろうが「対決」することも必要ではないだろうか。私には逃げ続けて、彼女達が行き着いた先が「幸せ」だとはとても思えないのだが。

基盤の考え方に、いまひとつ賛同できなかったとはいうものの、エンターテイメント物としては、よくできた作品だと思う。

これでもう少し、登場人物に肩入れできれば最高だったのになぁ……というところが、いささか残念な1冊だった。

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