『スーパーサイズ・ミー』は「30日間、マクドナルドの商品だけ食べ続けたらどうなるのか?」と言う実験を身体を張って行い、撮影したドキュメンタリー映画。
近年、アメリカは国民の肥満が問題視されていて、映画監督でもあり主人公でもあるモーガン・スパーロックは「ファストフードは本当に不健康な食べ物なのかどうか」を確かめようと考えて作品を撮ろうと決めたとのこと。
私達は「ファストフードは健康に悪い」「ファストフードばかり食べていたら病気になる」みたいに思っているものの、実際にファストフードばかり食べている訳でもないし、そこまで突っ切った生活をしている人もそうそういない。
アマゾンプライムで見掛けて「なんかお笑い芸人のチャレンジ企画みたいだな」くらいの気持ちで見始めたのだけど、予想以上なインパクトの強い作品だった。
今回ネタバレ全開の感想なのでネタバレNGの方はご遠慮ください。
スーパーサイズ・ミー
スーパーサイズ・ミー | |
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Super Size Me | |
監督 | モーガン・スパーロック |
脚本 | モーガン・スパーロック |
製作 | モーガン・スパーロック |
出演者 | モーガン・スパーロック アレクサンドラ・ジェイミーソン |
公開 | 2004年5月7日 2004年12月25日 |
ざっくりとこんな内容
俳優で監督のモーガン・スパーロック自身が、「1日に3食・30日間、ファストフードだけを食べ続けたらどうなるか?」を映像で記録するドキュメンタリー映画。
30日間、食事は水を含め全てマクドナルドで提供される物を摂取し、健康のための運動は行わず、彼の身におこる身体的・精神的な影響について記録していく。
記録と平行してモーガン・スパーロックはファストフード業界の社会的な影響を調査していく。
作品撮影時、モーガン・スパーロックは33歳、身長188cm、体重84kg、体脂肪率11%、体格指数23.7(正常値はアメリカでは19〜25である)という健康体。
撮影にあたってのルールはこんな感じ。
- 一日に3回マクドナルドの商品を食べる。
- マクドナルドで売られているもの以外は一切口にしない。
- 「スーパーサイズにしますか?」と聞かれたら、必ず「スーパーサイズ」にする。
30日間のチャレンジの末、モーガン・スパーロックの身体に起こった変化は次の通り。
- 体重は11kg増加
- 体脂肪率は18%に上昇
- 体格指数( BMI )は27に上昇(アメリカ基準では「標準以上」)
- 躁うつを発症
- 脂肪肝を発症
- 性欲減退
チャレンジ最終日は「最後のマック晩餐会」言うことで、親族や知人、スタッフを招待して大規模なパーティーを催す。
最後の食事の際には「明日起きたら、もうこれらを食べなくて良いだなんて、嘘みたいだな」と呟いている。
マクドナルド好きですか?
「マクドナルドを好きか嫌いか」って質問されたら私は迷わず「好き」だと答える。
ハンバーガー的にはバーガーキングやモスバーガーの方が美味しいと思うものの、バーガーキングやモスバーガーはマクドナルドよりお高くて、店舗数も少ないので気軽に入れるファストフード店とは言い難い。
しかもマクドナルドにはハッピーセットと言う子育て世帯にはありがたいメニューが存在する。子育てをするまでは知らなかったけれど、マクドナルドのハッピーセットは子どものいる家庭にとっては神過ぎるメニューと言っても良い。
ハンバーガー云々…もそうだけど、オマケが凄い。娘が幼児の頃はハッピーセットの玩具目当てでマクドナルドに足を運んだ。
今でこそハッピーセットを買わなくなったものの、季節系の商品が出ると物によっては「これは食べねば(使命感)」みたいな気持ちになるし、実際ちょいちょい利用している。
ファストフードの是非
「マクドナルド好きです」とは言うものの、身体に良いか悪いかと言うと「悪いに決まってるでしょ」って思っている人は多いと思うし、私もその中の1人。だけど「どれくらい身体に悪いのか?」ってことについては実のところ全く知らない。
『スーパーサイズ・ミー』は「どれくらい身体に悪いのか?」ってところを身体を張って検証している。
……とは言っても1ヶ月間のチャレンジ。「きっと体重増えるよね」とか「血圧上がっちゃうよね」くらいの予想はしていただけど、予想以上に悪影響を及ぼしていてビックリだった。
特に肝臓への影響が大きかったのは予想していなかった。
実験終了後の検査でモーガン・スパーロックの肝臓は完璧に炎症を起こしていて、実験に協力した医師も「アルコールの飲み過ぎで体を壊す患者ばかり見てきた自分にとっては考えも付かなかった」と話している。ちなみに、肝臓を壊した原因は「大量の脂肪分を摂取したからだ」と推察されていた。
性欲の減退があったのも予想外。人間、身体が健康じゃないと性欲も無くなってしまうのだなぁ。
アメリカの子ども達の様子
モーガン・スパーロックは作品の中で、ファストフードが与える影響について調査をしていたのだけど、印象的だったのがアメリカの子ども達の肥満と、学校での食事風景。
日本の場合、小学生は給食があるし、中学生以降は給食がない場合はたいてい家庭からお弁当を持っていくけれど、アメリカの場合は持参するかカフェテラス形式での昼食が多い。
カフェテラスでは自分の好きな物を取って食べる形式なので、子ども達は見るからに栄養バランスの悪そな食事を選んでいて「そりゃ肥満も増えるわ!」と突っ込みたくなってしまった。
日本人の食生活って素晴らしいな!!!
給食の素晴らしさは今更説明するまでもないけれど、日本人の親が作るお弁当って何だかんだ言って栄養バランスが取れている気がする。
「冷凍食品ばっかり使ってる家庭だってある」と言ったところで「白米意外は全部、肉」みたいなお弁当を持ってくる子は珍しくて、たいていのお弁当にはミニトマトくらいは入っている。
……日本人、立派過ぎる。ちょっと真面目過ぎるとは思うけど、給食とお弁当文化の素晴らしさを再確認した。
何でもバランスよね……って話
30日間のチャレンジの結果は私が思っていた以上に悪いものだったけれど、それでも私は「もうファストフードなんて食べない」とは思わない。
何でもバランスなんじゃないかなぁ。
体脂肪率が低過ぎて死んでしまったレスラーがいたり、菜食主義者が菜食を辞めたとたんに元気になった…って話があったりもする。人間は雑食なのだから、あまり極端なことをせずに適当に食べていれば良いように思う。
『スーパーサイズ・ミー』は30日間マクドナルドの商品を食べて過ごす…なんて突拍子もないチャレンジを記録した映画な訳だけど、見応えがあって色々なことを考えさせてくれる良い作品だと思う。
興味のある方は是非、観て戴きたい。