『ヒトラー 〜最期の12日間〜』は題名通りの内容でヒトラーの最後を描いた作品。ブルーノ・ガンツの名演技が話題になり、You Tubeやニコニコ動画等でパロディ動画がワンサカ登場した事でも知られている。
私が『ヒトラー 〜最期の12日間〜』を初めて観たのはいつだったか覚えていないのだけど、先日アマゾンプライムで目に止まって「ああ…これ懐かしいねぇ」なんて言いながら、何の気なしに流してみたら結局最後まで本気で観てしまった。
良い映画というものは内容を全部知っていても面白いのだなぁ。
「そう言えば感想書いてなかったな」ってことな気がついたので、改めて感想を書いてみることにした。今回は史実に基づく作品なのでネタバレ全開の感想です。
ヒトラー 〜最期の12日間〜
ヒトラー 〜最期の12日間〜 | |
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Der Untergang | |
監督 | オリヴァー・ヒルシュビーゲル |
脚本 | ベルント・アイヒンガー |
原作 | ヨアヒム・フェスト 『ヒトラー 最期の12日間』 トラウドゥル・ユンゲ メリッサ・ミュラー 『私はヒトラーの秘書だった』 |
出演者 | ブルーノ・ガンツ アレクサンドラ・マリア・ララ |
音楽 | ステファン・ツァハリアス |
公開 | 2004年9月16日 2005年7月9日 |
あらすじ
物語のスタートはトラウドゥル・ユンゲの回想場面から。「若い頃の自分を諌めたい。何も知らなかったから許されるということはないのだから」という語りが入り、1942年に飛ぶ。
1942年11月、ミュンヘン出身のトラウドゥル・フンプス(ユンゲは結婚後の姓)は、東ナチス総統大本営ヴォルフスシャンツェ(狼の巣)を訪れ、ヒトラーの秘書採用試験を受ける。ヒトラーはトラウドゥルがミュンヘン出身だと知って彼女に興味を持ち、秘書として採用する。
1945年4月20日、トラウドゥルはヒトラー総統の愛人エヴァ・ブラウンや先輩秘書官のゲルダ・クリスティアンたち総統地下壕の同僚と共に、ヒトラーの誕生日の準備を進めていた。
ソ連軍は既にベルリン近郊に迫っており、ドイツの敗北は時間の問題となっていた。国家元帥ゲーリングやSS長官ヒムラーなどの最高幹部たちはヒトラーにベルリン脱出をヒトラーに進言するが、ヒトラーは頑なにベルリン脱出を拒否する。
4月22日、地下壕ではソ連軍に対処するための作戦会議が開かれる。
ヒトラーはベルリン周辺に駐屯する2軍に攻撃を命令するが、部下達から「兵力が不足していて、攻撃は不可能」と指摘されて激怒し「もはやこの戦争には勝てない。だが私はベルリンから離れる気はない。離れるくらいなら自殺する」と宣言して会議を終了させる。
ヒトラーはトラウドゥルをはじめとする女性達にに地下壕から退避するように指示するが、彼女達は地下壕に残ることを決意する。
4月23日、「ゲーリングが総統権限の委譲を要求する電報を出した」という報告をボルマンから受け取ったヒトラーはゲーリングの全権限剥奪と逮捕を命令する。
軍需相でヒトラーの友人でもあるシュペーアが地下壕を訪れ、ヒトラーと退去の挨拶を交わす。シュペーアはヒトラーから受けていたインフラ設備の破壊命令を無視していたことを告白してヒトラーと別れ、地下壕を後にする。
グライム元帥やゲッベルス、エヴァ、トラウドゥルたちと食事をとるヒトラーの元に、ヒムラーが連合軍と和平交渉を行っているという報告が入る。
「忠臣ハインリヒ」と呼んで信頼していたヒムラーの裏切りにヒトラーは激怒し、ヒムラーの逮捕と地下壕にいるヒムラーの代理人であるフェーゲラインSS中将の逮捕を命令する。
ヒトラーはグライムに前線指揮を命令し、エヴァとマクダはそれぞれ妹のグレートルと息子のハラルトに宛てた手紙をライチュ飛行士に託す。
愛人宅にいたフェーゲラインは逮捕され、義姉であるエヴァが助命を嘆願するが、ヒトラーはフェーゲラインを処刑する。
4月29日未明、ヒトラーはエヴァと結婚式を挙げ、ささやかな祝宴を開くき、翌日4月30日、ヒトラーは地下壕に残った人々と別れの挨拶を交わし、エヴァと共に自殺を図る。
ヒトラー夫妻の遺体はゲッベルスたちによって地上に運び出され、焼却される。
5月1日、参謀総長クレープス大将はソ連軍のチュイコフ上級大将と停戦交渉を行うが、「無条件降伏以外は認められない」と返答され、交渉は失敗に終わる。地下壕の人々はベルリン脱出の準備を進めるがゲッベルス夫妻は子供たちを毒殺した後、自分たちも自殺する。
トラウドゥルは官庁街防衛司令官・モーンケ少将の率いる第一陣と共に地下壕を脱出し、脱出する人々を見送ったクレープスとブルクドルフは共に拳銃自殺する。モーンケたちは敗残部隊と合流するが、ソ連軍に包囲されて降伏する。
一方、トラウドゥルはシェンクやゲルダに勧められて包囲網を脱出し、無事に逃げ延びる。
ブルーノ・ガンツがヒトラー過ぎる
『ヒトラー 〜最期の12日間〜』と言うと、日本のweb界隈では本家よりもパロディネタである総統閣下シリーズの方が有名だと思う。総統閣下シリーズが有名になった理由はブルーノ・ガンツの名演技が全てだと思うのだけど、改めて観るとブルーノ・ガンツのヒトラーはヒトラー過ぎると思う。
……って、誰もヒトラーに会ったことがないのに「ヒトラーっぽい」と思ってしまう不思議。それくらいブルーノ・ガンツの演技はインパクトがあったし、1度観たら脳に焼き付いてしまう。
ヒトラーの描き方については賛否があると思うのだけど『ヒトラー 〜最期の12日間〜』の中でのヒトラーは仕事人としては厳しい面を見せる反面、女性と子どもには優しい人として描かれている。
実際のヒトラーがどんな人間だったのかはさておき、作品の中のヒトラーは「何だかんだ言って憎めない人物」として表現されていて、ヒトラーの女達…愛人のエヴァ・ブラウンをはじめ近くにいた女達は逃げることよりもヒトラーと死ぬことを良しとしている。
ヒトラーのしたことは許すことが出来ないけれど、彼に惹かれる人がいたからこそナチス・ドイツが成立していたのだなぁ…と実感させられた。
戦時下における子どもの扱い
先に書いたけれど『ヒトラー 〜最期の12日間〜』の中でのヒトラーは女性と子ども(ただしゲルマン人に限る)には優しい人物として描かれていた。
子ども達は美しくてしかもヒトラーを慕って合唱を披露したりする。そして言っちゃあなんだけど、ブロンドの子どもは控えめ目に言って最高。マジで可愛い。ヒトラーが愛した理由は理解できなくもない。
……だけど子どもって人種関係なく可愛い…ってのが真理で「この可愛さしか認めん」とか、どう考えてもクレイジー。
そしてその可愛い子ども達は大人の都合で無慈悲にも実親の手によって毒殺される。事情が分からず殺されてしまう子もいたけれど、自分の運命を薄々感じている子もいて、子ども達が毒殺される場面は子を持つ親としてはキツイものがあった。
「戦争ってそんなもん」と言ってしまえばそれまで…って話だけど。
それでも生き伸びる人の力強さ
映画の冒頭で登場したヒトラーの秘書であるトラウドゥル・ユンゲはラストで地下壕から脱出し、ソ連軍の包囲を潜り抜けて生き残り、冒頭場面へと続く。
ソ連軍の包囲を潜り抜ける歳、トラウドゥル・ユンゲを助けてくれたのは1人の少年だった。ソ連軍の兵士達も女と子どもには手を出せなかったから助かった…ってオチ。
トラウドゥル・ユンゲと助かった少年と、地下壕で実の母親から殺された子ども達との対比が鮮やかで素晴らしかった。
残酷な話ではあるけれど、それでも生き伸びた人間の強さは素晴らしいと思った。
綺麗事だけではないみたい……
『ヒトラー 〜最期の12日間〜』は映画としては評価が高く、ドイツ国内でも好意的に解釈されていたようだけど、描かれていたことの全てが事実…って訳じゃないみたい。
主人公的に描かれていたトラウドゥル・ユンゲは「ヒトラーが非人道的なことをしていたなんて知らなかった」と表現されているものの「実際はそうじゃなかったのでは?」って説がある。
また『ヒトラー 〜最期の12日間〜』で紳士的に描かれていた人物達も映画のエピソードとして良い人としてキャラ変されていたとのこと。作品として必要な要素だったとは思うのだけど史実のヒトラーやその周囲にいた人達の真実とは別物の創作だという認識は必要だと思う。
……と。文部省推奨的&PTA的なことを書いてはみたものの、ヒトラーの愛したゲルマン美人とイケメン軍人の集団は絵面的に美しく、ブルーノ・ガンツの演技は最高で『ヒトラー 〜最期の12日間〜』は何度観ても面白い名作映画だと思う。