『レスラー』はミッキー・ローク主演の2008年に公開されたアメリカ映画。ヴェネツィア映画祭金獅子賞、ゴールデングローブ主演男優賞受賞と話題になった作品のようだけど、我が家はちょうど娘が生まれたばかりの頃で、当時のことはまったく覚えていない。
ケーブルテレビで録画したのを予備知識ゼロで視聴したけど、なかなかの名作だった。ちなみにR15なのでお子様にはオススメ出来ない。
好き嫌いはキッパリと分かれるタイプの作品だけど、映画賞を取るだけのことはある作品だと思う。
レスラー
レスラー | |
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The Wrestler | |
監督 | ダーレン・アロノフスキー |
脚本 | ロバート・シーゲル |
出演者 | ミッキー・ローク マリサ・トメイ |
音楽 | クリント・マンセル |
主題歌 | ブルース・スプリングスティーン |
公開 | 2008年12月17日 2009年6月13日 |
あらすじ
主人公のランディは1980年代に人気レスラーだったランディだが、二十数年経った現在はスーパーでアルバイトをしながら辛うじてプロレスを続けていた。
ランディは年増のポールダンサー、キャシディに会うためにストリップクラブを訪ねるのことが楽しみで、その日暮らしの生活を続けていた。
ある日、往年の名勝負と言われたジ・アヤトラー戦の20周年記念試合が決定する。
メジャー団体への復帰チャンスと意気揚がるランディだったが、長年のステロイド剤使用が原因なのか、心臓発作を起こし倒れてしまう。
現役続行を断念したランディは、長年疎遠であった一人娘のステファニーとの関係を修復し、新しい人生を始める決意をするが、バーで出会った女とセックスとコカインにふけり、娘との約束をすっぽかしてしまう。傷ついた娘はランディに絶縁を宣言。
スーパーの肉売り場で働き始めたランディだったが、元プロレスラーであることに気付いた客に指摘され、スライサーで手を怪我する。やけになったランディは仕事をやめてアヤトラー戦でレスラーに復帰することを決意する。
プロレスと言う名のショー
私はプロレスを観ない人間だけど亡くなった祖母がプロレス好きだったので、子どもの頃は祖母と一緒にプロレスを観ていた記憶がある。当時はアントニオ猪木の全盛期で祖母は熱くなってプロレスを観ていた。
当時の私は「あ~。もうすぐ猪木は右足に爆弾を抱えている…って話が出てくるな~」等、子どもながらに「プロレスは時代劇のようにお約束の上で進んでいくものである」と言うことを理解していた。
プロレスを知らない人の中には「プロレスは危険で野蛮である」と思っている人もいるけれど、プロレスはあくまでもショー。『レスラー』に登場するレスラー仲間は実に仲が良くて和気あいあいとしていた。
プロレスを愛し、相手を思いやりながら試合を作っていく姿は感動的ですらある。
男の友情…とか、そういうノリが好きな人は楽しめる作品だと思う。
一流レスラーだけど人としてはクズ
ミッキー・ローク演じる主人公のランディは、落ちぶれているとは言うものの、レスラーとしては一流でプロ意識が強い。
たとえトレーラーハウスの家賃を滞納したとしても、日焼けサロンに通い、髪を染め、プロテインやステロイドにかけるお金は惜しまない。トレーニングも欠かさないし、プロレスラーとしての矜持は素晴らしいと思った。
だけど職業人として素晴らしくても、人間としてクズ…ってことはありがちな話で、ランディもそのタイプだった。
ミュージシャンにしても、画家にしても、小説家にしても1つ頭を抜ける人ってクズ率が高い気がする。もちろん人間的にも立派な人だっている訳だけど「そんな風にしか生きられない」って人。
ランディの場合、全てをプロレスに捧げていて、家族をかえりみることがなかった。
結婚して妻との間に娘をもうけるも、当然のように離婚。離婚後は妻とも娘とも没交渉。
それなのに死期が迫ってくることを感じたとたん、娘との交流を再開させようとするムシの良さである。
しかも結局、行きずりの女とヤクを決めてセックスに没頭していて娘との約束をすっぽかしていたりして、絵にかいたようなクズだった。
娘がランディに対して「いつもいつも約束を破ってばかり」とブチ切れる場面を観た時は亡父のことを思い出してしまった。
私の死んだ父も控えめに言ってクズだったのでランディの行動は「あ~。分かる分かる。娘、逃げて~。そう言うタイプは絶対に立ち直らないから~」と思いながら物語を追っていた。
プロの矜持と男の浪漫
主人公のランディはなかなかのクズだったけど、プロレスラーとしての生き様は素晴らしいと思う。
また、ランディの周囲にいる仲間達も良かった!
付かず離れず。リングの上にいる時は互いを信頼し、思いやり、そして観客が喜ぶ試合を作り上げている。
『レスラー』は男の浪漫とか、男の意地とか、そう言うノリが好きな人には是非是非オススメしたい。私も映画作品としては面白いと思ったし、十分過ぎるほど楽しませてもらった。