かれこれ20年以上も前に読んだ本なのだが、宮城まり子のエッセイを読んでふと再読してみたくなり手に取ってみた。
この作品は女優であった作者が作った「ねむの木学園」という肢体不自由児療護施設で生きる子供達のことを書いたエッセイ集である。
この本を買った当時、私は宮城まり子に憧れを抱いていた。そして宮城まり子のように、そういう関係の仕事に就きたいと思っていた。
あの頃は若くて、熱くて馬鹿だった。今でも熱くて馬鹿なのは変わらないけれど。
そしてまったく、関係のない仕事をして、たいして世間の訳にも立たない普通の大人になってしまった。
神様にえらばれた子どもたち
- ねむの木学園は、歌手で女優の宮城まり子が設立した肢体不自由児のための療護施設である。
- ねむの木学園で暮らす子どもたちとの生活を綴ったエッセイ集。
感想
あらためて読み返してみても、熱くなってしまう。障害者が出てくる話というと「お涙頂戴」って感じのものが多いが、そういう意味合いではなくて。
宮城まり子は愛情溢れる人なのだと思う。
ごく稀だけど普通の人の何十倍も愛に溢れた人がいる。有名なところだとマザー・テレサがそうだろう。「愛情」というのも一種の才能なぢゃないかと思うほどに。
20年たって再読してみても、熱くなる箇所が同じなのには我ながら笑ってしまった。
心あたたまる話もあれば、そうでない話もあるのだが、私がいっとう心に残ったのは「一生懸命お祈りしたら、交通事故でなくした足が生えてくる」という親の言葉を信じて、毎日お祈りをする知的障害児に、宮城まり子が「お祈りをしても足は生えてこないのよ」と言い聞かせるエピソード。
子供にいい加減な嘘を言った大人に腹が立つと同時に、それを否定しなければならない宮城まり子の気持ちが想像できて泣けてくるのだ。
こういう仕事って、同情や綺麗ごとだけではやっていけないと思うのだけど、それと同じくらい愛情がなければやっていけないと思う。
どんな子供も幸せに大きくなれる世の中だといいのになぁ……と思う。
今の私には何もできないし、たとえ何かできたとしても、積極的に働きかけようという情熱はないのだけれど、とりあえず手近なところから何かしたいな……なんてことを思った。