明治維新直後の根津の遊郭が舞台の物語。
私はどちらかと言うと時代小説は苦手だし、そんなに数も読んでいないのだけど「ネオ時代小説」とでも名づけたいような作品だった。
丹念に江戸の風俗を描いているのだけど、どことなく現代小説っぽい印象。
Twitterで、物凄い勢いで推されていたので「そんなに面白いなら読んでみようかな」と手に取った。
まぁ、悪くは無いけど私にはそこまで面白いとは思えなかった。たぶん、これは相性が悪いだけだと思う。
ちなみに木内昇はこの作品で第144回直木賞を受賞している。
漂砂のうたう
御一新から10年。武士という身分を失い、根津遊廓の美仙楼で客引きとなった定九郎。
自分の行く先が見えず、空虚の中、日々をやり過ごす。苦界に身をおきながら、凛とした佇まいを崩さない人気花魁、小野菊。美仙楼を命がけで守る切れ者の龍造。噺家の弟子という、神出鬼没の謎の男ポン太。
変わりゆく時代に翻弄されながらそれぞれの「自由」を追い求める男と女の人間模様。
アマゾンより引用
話のテンポは決して良くない。時代小説なら、こんなものなのだろうか。
時代小説はあまり数を読んでいないので分からないけれど、ジリジリする感じ。
根津の遊郭の様子が細かに描かれていて面白かったけれど、物語の華とも言える遊女達に魅力を感じなかった。
馬鹿で泥臭い遊女もいれば、物語の核になる才色兼備の花魁もいるのだけれど、どの遊女もお人形のようで人間臭さや「情」を感じる事が出来なかった。
作者が描ききれなかったのか、それとも敢えてそうしてみたのか。
根拠も無く思うのだけど、この作品は物語性の強い文学作品を好む人よりも、ミステリ系の作品を好む人の方が面白く読めるのではないかと思う。
構成とか文章とかは丁寧なので、ハマる人にはハマるような気が。
ただ感情に任せて押し切るタイプの作品ではないので、感性重視で読む人にはイマイチかも知れない。
好き嫌いはともかく「なるほど」と思える作品だった。