作者、宇佐見りんは初挑戦の作家さん。『かか』は第56回文藝賞を受賞したデビュー作とのこと。
題名からして、母と娘の葛藤を描いた作品なのかな?」と予想して、図書館で借りてみたものの私の好きなタイプの作品ではなかった。
ただ「好きの方向性が違う」ってだけで、刺さる人には刺さると思う。
かか
- 主人公の「うーちゃん」は19歳の浪人生。
- 主人公は母親(かか)を愛しているのだが、かかと付き合い切れずにいる。
- かかは離婚を機に徐々に心を病み、酒を飲んでは暴れることを繰り返す。
- うーちゃんは鍵アカウントにしたSNSを心の支えとして生きていた。
- ある日、うーちゃんは祈りを抱え、熊野へと旅立つ
- 第56回文藝賞受賞作。宇佐美りんデビュー作。
感想
『かか』と言う題名を聞いて、私が最初に連想したのは檀一雄の『火宅の人』だった。
『火宅の人』の中で子ども達は父である檀一雄のことを「お父さん」とか「お父ちゃん」みたいな一般的な呼び方ではなく「チチ」と呼んでいた。
私は檀一雄リスペクトマン。「チチ」がアリなら「かか」もアリだろうと思ったのだけど、どうしても受け入れることが出来なかった。もしかしたら主人公の一人称が「うーちゃん」であることも関係しているのかも知れない。
話し言葉を重視した文章で「読んでいるうちに慣れるだろう」と思っいてたけど、最後まで慣れることが出来なかったのだ。
例えば…
(中略)そいでもほったらかすとよけいに惨めになるだけだかん、ただ黒いのを除けることに集中するしかないのんよ。(後略)
……と言った調子で書かれるので、どうにも読み心地が悪くて、お尻がモゾモゾしてしまった。
女性の「性」についての描き方も独特で、やたら生理(月経)の描写が多くて、その辺も受け入れ難い。好んで性を描く作家さんは多いし「性を描く作品は無理」って訳ではないのだけれど、宇佐見りんの描写は私の好みに合わなかったのだ。
だけど、とても力強い作品だし、伝えたいことはよく分かる。
もしかしたら「うーちゃん」と同世代の若い人が読んだら共感する部分が多いのかも知れないな…と思ったりする。要するに中年女性には無理だった…ってことだ。
なんとなく町田康のノリに似ている気がするので、町田康が好きな人なら楽しめるかも知れない。
私は1ミリも楽しめなかったけれど、エネルギッシュな作家さんが出てきたな…とは思っているし、今後の活躍を期待したい。