お久しぶりのミステリー。ミステリーは苦手だけど、この作品は面白く読めた。
幼女殺人と得体の知れない新興宗教という、今時な感じの2大軸が良い味を出していたと思う。謎解き要素よりも、純粋に「読み物」としての面白さが勝っていたように思う。
ちなみにミステリ音痴の私でさえ、非常に早い時期に犯人とオチが分かるくらいの設定だった。
慟哭
連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。
こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。
アマゾンより引用
感想
新興宗教のヤバイ感じが素晴らしく上手く書けていたと思う。
私はゴキブリ以上に「新興宗教」ってヤツが大嫌いだ。人の弱味につけこんでお金を集めるなんて最低だと思う。
その教えがたとえ「エセ」であったとしても、それらを信じる人を否定しようとは思わないけれど、お金の集まるところに「本当のもの」は何もないと思っている。
身近にも信仰宗教にハマっている人がいるのだけれど「そうそう。そういうテを使ってくるよね」と何度も頷いてしまうほど、新興宗教の実態が丁寧に描かれていた。
巷には案外「新興宗教にハマっちゃってる人」が多いのだろうなぁ……なんてことを思わずにはいられない。
もう1つ印象に残ったのは「大切にするべき物を見失ってしまった人の悲劇」というテーマ性だった。
これも現代においては重要なポイントだと思う。
結局のところ、当たり前の事をちゃんとこなして、まっとうに生活していれば不幸にはならない…って事だと思うのだが、なかなか、それが難しいのが現実だったりする訳で。
貫井徳郎の書いた物を読むのは、これが初めてなのだけど「ちょこっとだけ切り口が面白い」ミステリーなら私にも読めるような気がするので、折を見てトライしてみたいと思う。