昭和初期、女学校を卒業したばかりの主人公が、とある公爵家令嬢の小間使いとして働いている時に体験した不思議な物語。
ホラーと言うほどでもないけれど夏に読むは相応しい作品だった。
怖さを味わうよりも「雰囲気」を味わうタイプの作品だと思う。
抱擁
二・二六事件から間もない、昭和十二年の東京・駒場。前田侯爵邸の小間使として働くことになった十八歳の「わたし」は、五歳の令嬢・緑子の異変に気づく。
彼女は、見えるはずのない《誰か》の姿を見ている――。
歴史の放つ熱と、虚構が作り出す謎が、濃密に融け合う世界。イギリス古典小説の味わいを合わせ持つ、至高の物語。
アマゾンより引用
感想
雰囲気小説と言うのかなぁ。文章はまずまず読みやすいし、物語の舞台が公爵家なので豪華な生活っぷりを読むだけでも気持ちが良いのだけれど、なんだかちょっと物足りない気がした。
たぶん色気が足りないのだと思う。
私は「ホラーとエロスは仲良し」だと思っている。ホラー小説って、性的な事柄を全面に出していない場合も、何気にエロい。
この作品の場合は、軽くそれらしいエピソードがあるにも関わらず、これっぽっちも色気を感じなかった。
PTA的と言うか、学級委員長的と言うか。真っ直ぐ丁寧に書かれているのだけど面白味に欠ける気がした。
お話の路線が定まっていいなのも悪かったように思う。ホラーなのか、幻想小説なのか。それとも人間の根本的な部分…業のようなものを描こうとしたのか。
どの要素にも振れていなかった分だけ、のめり込むことが出来ず、全体的に薄味の印象。
面白く無かった…とまでは言わないけれど、色々と勿体ない作品だった。
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