官能小説の大家が書いた「変態さんいらっしゃい」なエッセイ集だった。
団鬼六の作品は何冊か読んだけれど、このエッセイ集を読んで団鬼六のイメージが少し変わった。
私の中で団鬼六は「SM大王」とか「エロ怪人」なイメージがあったのだが、想像していたよりも、普通っぽい人のような気がした。
怪老の鱗 奇人・変人交遊録
団鬼六が出会った奇人、変人、倒錯人間。最新エッセイ集。
「痴漢相手の女性」と結婚した男、失われた悲壮美の世界を求める「切腹友の会」、夜になるとマゾ女に変貌する高慢な女弁護士など、怪老・団鬼六が出会った奇人・変人と、その豊饒な倒錯世界。
『週刊宝石』連載の単行本化。
アマゾンより引用
感想
作品の中には、変態性癖を持った人が沢山登場する。
彼らを知ったかぶりするのではなく「俺にはとても理解できない」としながらも「そういう世界もアリ」という風にとらえているのは、なかなか潔くて良いと思った。
サバけていると言うか、サッパリしていると言うか。
そして意外だったのは団鬼六「実はハードなSMは好まない」というところ。
そういえば、団鬼六の著作は上品なエロが多い。
私がはじめて読んだ団鬼六の小説は麗しい人妻が「お出しになっても、よろしくってよ」と言うシーンがあり「こんな場面で上品言葉ってのも、不思議だよなぁ」と思った覚えがある。
昭和ノスタルジーというか「恥じらいのあるエロ」がお好みらしい。
どのエッセイもそれなりに面白かったのだが『美少年』という作品のモチーフになったであろうエピソードは、読んでいて不快感を覚えた。
『美少年』は好きな作品ではあるのだが、あれは小説だからこそ好きなのであって、実際にあったこととなると「人として、やってはいけないこと」だと思うのだ。
作り事だからこそ楽しめる世界ってのはあると思う。もっともエッセイだって作りごとの世界であり、100パーセント事実ではないのも承知しているが「本当にあったこと風」というだけでも小説とは違う形で読んでしまうのだ。
作品全体を通してみると「変態話」をベースにして「昭和」という時代を懐かしんでいるようなところがあるので、ノスタルジックな気持ちに浸りたい人向けかも知れない。
もっともベースがエロなので「ぜひ読んでみてはいかがでしょう?」とは、とても言えないのだけど。
そこそこ楽しめるエッセイ集だと思った。