いかにも朱川湊人って感じの作品だった。
私が朱川湊の作品を読むのはこれで6冊目(読書録には5冊しか書いていない)なのだけど、流石にパターンが分かってきた。
朱川湊の作品は幽霊と人情と雰囲気で構成されている。話自体も悪くはないのだけど、雰囲気に流されてしまう部分が大きい。
なんとくなくだけど佐々木丸美とちょっと似ている気がする。もっとも、佐々木丸美の雰囲気とはまったく違う路線なのだけど。
鏡の偽乙女 薄紅雪華紋様
大正三年、東京。画家を志して家を飛び出した槇島功次郎は、雪の無縁坂で、容姿端麗な青年画家・穂村江雪華と出会う。
風変わりだが聡明、ずば抜けた画才を持つ雪華は、この世に未練を残して死んだ者の魂を絵で成仏させる、驚くべき能力の持ち主だった。
果たせぬ恋、罪深き業…死者たちの断ち切れぬ思いが、二人の周囲に不可思議な現象を巻き起こす。
幻想と怪奇に満ちた、大正怪異事件帖。
アマゾンより引用
感想
この作品は「大正時代」って舞台がとても上手く効いていた。
主人公は画家の卵。男2人の名コンビってのはミステリー小説の定番中の定番。軽快なかけ合いがなかなか面白かった。
軽快過ぎて、ちょっとラノベ風な感じがするのはご愛敬ってところだろうか。
主人公コンビの人間像もさることながら、脇役達も素敵だった。特にこの作品に出てくる登場人物達は、どこか不完全で何かが欠けている人達ばかり。だからこそ愛しくも思えるし、共感も持てた。
そして、その不完全な人達に注がれる視線はとても優しい。私はきっと、その優しさが好きなのだと思う。
お話の1つ1つは無難に面白いのだけど、シリーズ化を見越して書かれたものなのか、肝心のところが全く書かれていなかったのが残念だった。
シリーズと言えば『わくらば日記』の続きも気になるのだけどなぁ。
けっこう好みなのだけど、あまりにも「道半ば」な感じが強いので、読後はちょっと物足りなかった。早く続きが読みたいものだ。