辛酸なめ子はペンネームが、どうしても受け付けなくて、気になりつつも手にとったことがなかった作家さんだったのだが、好奇心の方が押えきれなくなってきたので読んでみた。
「辛酸をなめる」という言葉をもじってペンネームを付けるくらいなのだから、その名の通り「辛酸をなめた人」か、そうでなければ、反骨精神と洒落っ気のある人なんぢゃないかと予想を立てて読み始めた。
自立日記
妙齢の女の生き方の選択について 微妙な年頃の女性が抱く様々な問題点
例えば、実家暮らし、友達がいない、地域のオシャレ格差、老後の不安etc…
に、自分なりに立ち向かっていった三年間の記録です何卒よろしくお願いいたします28歳、独身漫画家。
1998年から2001年、みじめな女の3年間を綴ったWeb日記『女・一人日記』を単行本化。
アマゾンより引用
感想
辛酸なめ子は生粋の小説家ではなくて、漫画も書けば文章も書く人だった。
そして、この作品は最初から出版することを意識して書いたのではなく、ウェブ日記をまとめたものということで「読み物」としては、かなり未熟な印象を受けた。
私は他人のウェブ日記を読むのにハマってしまったクチの人間ではあるが、ウェブ日記というのは、インターネットという特殊な環境の中で「毎日追いかけて読む」というストーカーめいたノリで読むからハマるのであって、1冊の本として突きつけられると物足りない感が出てしまうのは仕方のないことなのかも知れない。
文学ではなく「日記」として読めば、そこそこ面白い読み物だと思う。
ただ、趣味嗜好が合うかどうかとなると別問題。
辛酸なめ子は私よりも2歳年下の女性で、日記を書いていた当初は25歳そこそこだと思うのだが、「女として終わっている」という文章が何度も何度も登場する。
その年齢で、そういうことを書く人というのは、私から言わせれば「甘ちゃん」でしかない。正直言ってウザイ。
しかし、そういうの感覚は、年齢からくるものではないのかも知れない。本人が「終わっている」というのだから、終わっているのだろう……うむ。
日記だからこそ吐露できる部分があるというのは理解できるのだが好き嫌いを問われれば、嫌いなタイプの文章だ。
読み物としてはウザかったが、日記としては良いんじゃないかと思う。
日記なんだもの。好きに書けばいいのだ。ただ、この作品がイマイチなのは中途半端に「書きたいこと」を書いて、その勢いだけで出版されてしまったところにあると思う。
読ませるような上手いものでもなく、かといって作者の叫びも感じられなかったのが残念だ。
日記文学は、文筆を仕事としている作家さんが、出版を意識して書いたものか、そうでなければ『二十歳の原点』のように出版を意識しないで書いた素人の日記が面白いように思う。
結局、辛酸なめ子のペンネームについての云々は分からず仕舞いだった。
日記を読んだ限りでは「辛酸をなめる」ほど苦労されてきたとは思えないし、かといってユーモアがあるようにも思えなかった。
ただこの作品に書かれてること以外で「辛酸をなめる」にふさ相応しいエピソードの持ち主かも知れないので今回は保留といったところ。
日記好きなら、それなりに読む価値ありだと思うが、そうでなければ、オススメしかねるような1冊だった。