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推しは推せる時に推していけ。

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その日。大阪は朝から鬱陶しい雨が降っていた。

特に理由は無いけれど、なんだか気持ちが塞ぐので家事のBGV代わりにとユーチューブでホセ・カレーラスのミックスリストを流していた。私は一時期ホセ・カレーラスのファンクラブに入っていたほどホセ・カレーラス好きだ。もちろんCDは沢山持っているけれど、だらっと流すにはユーチューブが便利。

ちなみにこれはドミンゴ・パバロッティを加えた3代テノールの公演

掃除の手を止めてふとPCの画面に目をやると、そこには若かりし頃のカレーラスの姿があった。

2019年現在、ホセ・カレーラスは72歳。

もう「おじいちゃん」と呼ばれるお年だけれど、かつては王子様感の溢れるテノール歌手だった。読書サイト的な小話を付け加えると、桐野夏生の『魂萌え!』にはホセ・カレーラスの追っかけをしている女性が登場する。追っかけがつくくらい大人気だった…って事だ。

私は1度好きになった対象を嫌いになる事はまずまず無いけれど、最高潮の情熱を保ったままで好きでいる事は難しい。

音楽でも芸術でも何でもそうだと思うのだけど、人間や人間の作った物にはピークがある。

どんなに素晴らしいアーティストやスポーツマンも年を取ればかつての輝きを失ってしまう。小説家だってそうだ。どんなに素晴らしい作品を生み出した作家でも「あ。この人、作家のピークを過ぎちゃったんだな」と感じることがある。

「これでもか!これでもか!」と言わんばかりに、老いてもなお次々と名作を送り出す作家もいるけれど、大抵の場合はある一定の年齢を過ぎると作品に力が亡くなっている。例えば瀬戸内寂聴なんかも、結構なお年まで脂っこい作品を書いていたけれど、最近は抜け殻のような短編しか書かなくなっている。もっとも、瀬戸内寂聴の場合90代で小説家として現役ってだけで凄いのだけど。

何かを好きになったなら、推せる時に推しておかねばならない。

推しは永遠に若くて元気でエネルギッシュ……ではないのだ。

諸行無常って言葉は本当にそうなんだなぁ……としみじみ思う。どんなに好きでもずっとずっと同じではいられいのだ。それは残酷な現実だけど、だからこそ新しい物が出てるくるのだから世の中上手く出来ている。

歌手だったり、役者だったり、漫画家だったり、小説家だったり。色々な人を好きになって推してきたけれど、これから先も何かを推し続けていける人生だといいな…なんて事を思ったりした。