昔の『ミセス』を振り返りつつ、当時の風俗や女性について語ったエッセイ集。
『ミセス』とは奥様向けの雑誌。
男性諸兄の中にはご存じない方もおられるかも知れないけれど、そこそこの年齢の女性なら自分で買うことはなくても、美容院や病院の待合室、あるいは自分の母親や叔母さんやなんかが読んでいるのをチラ見した事くらいはあるのではないかと思う。
昔のミセス
繊細かつ大胆。ビターな甘さ全開の最新エッセイ集。
アマゾンより引用
感想
取り上げられていたのは、私の母よりも少し上の世代から、母達が現役で頑張っていた頃の『ミセス』だと思う。
そこには古き良き昭和の主婦の世界が繰り広げられていて、やたら懐かしくて涙が出そうだった。
当時の風俗は手を伸ばせば届くような…ほんの少し前の日本の事なのに、もはや別の世界のようにさえ思える。
私はこのエッセイ集を読んで「懐かしい」と思った訳だけど、私はこのエッセイ集で取り上げられている『ミセス』の時代を全く知らない。
それなのに「懐かしい」と思うのは、その時代が懐かしいのではなくて、それらを通して自分の子供時代や、あるいはその当時の母親は叔母、あるいは近所で見かけた女性達を懐かしんでいるのかも知れない。
作者の金井美恵子と共に、あらためて『ミセス』を振り返ってみると、当時流行っていたことなどが滑稽に見えるのだが、今流行っていることも、何十年か後に振り返ってみれば滑稽に見えるのだろうと思うと、ちょっと面白い。
私が生きている「今」も、いつかはレトロとか懐古主義の領域に行ってしまうのだ。
レトロとか『暮らしの手帖』が好きな人なら、目を通しておいて損はしないと思う1冊。
ちょっとしたお菓子をつまみつつ、お茶でも飲みながら、気楽に読むのにはうってつけの作品だと思う。
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