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屋根をかける人 門井慶喜 角川書店

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『屋根をかける人』はメンソレータムでお馴染みの近江兄弟社を作ったメレル・ヴォーリズの生涯を描いた伝記小説。

もし読むのであれば、メレル・ヴォーリズの妻、満喜子の生涯を描いた玉岡かおるの『負けんとき  ヴォリーズ満喜子の種まく日々』と合わせて読むとさらに面白いと思う。

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屋根をかける人

「日本人として生きる」ことを選んだアメリカ人建築家の壮絶な一代記

明治末期にキリスト教布教のために来日したアメリカ人建築家、メレル・ヴォーリズ。

彼は日本人として生きることを選び、 終戦後、昭和天皇を守るために戦った――。彼を突き動かした「日本」への思いとは。

アマゾンより引用

感想

「面白いと思う」と書いてみたものの、実のところ最高だったかと言われるとそうでもない。

玉岡かおるの『負けんとき  ヴォリーズ満喜子の種まく日々』の時も「面白いけど物足りない」的な事を書いていたけれど、この作品についても全く同じ事を感じた。

そして2冊読んでみて気がついた。日本でクリスチャンとして生きた人の伝記って、真面目過ぎて物足りないんだな…と。

面白くない…って訳ではないのだ。

英語教師として滋賀県にやってきたメレルが布教活動のために考えた戦略は面白かったし、宗教者でありながら商売人だったりするところも感心させられた。

ただメレルは『ドラえもん』で言うなら出来杉君的な人なので、凄いっちゃあ凄いけれど、魅力に欠けると言うか面白くないのも事実なのだ。

あと困難にぶつかった時に「神様が正しいと思われるなら必ず上手くいく」と言う、キリスト教信者独特の思想は、信者ではない人間には感覚として掴めないし、悩みなくして進んでいく人の姿を見てもイマイチ共感出来ないのだと思う。

また伝記小説だから仕方がないとは思うものの、物語のテーマと言うか方向性が散漫になっているのも惜しい気がする。

沢山の事を成し得た人だって事は分かるのだけど、やっている事がアッチコッチ飛ぶので、どれもこれも薄味でイマイチ凄さが伝わってこない。

実際は物凄くパワフルな人だったと思うのだけど「品行方正なクリスチャン」と言う部分が邪魔をして、パワフルさが伝わってこないのも残念だった。

…とは言うものの「こんな人がいたのか!」と言う意味では充分面白いし、建築が好きな人にはオススメしたい。

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