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母なるもの 遠藤周作 新潮文庫

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日本人的宗教観と「母の愛」のようなものを求めずにはいられない人を描いた作品を中心に収録した短編集である。

「遠藤教」とも言える作者の宗教観を手軽に読むなら、うってつけの1冊ではないかと思う。

私が最高に好きな短編集は『月光のドミナ』だけれど、もし「遠藤周作を読みたいんだけど、オススメってなに?」と聞かれたら、この本をすすめたい。

『母なるもの』にキャッチフレーズをつけるならば「1冊で分かる遠藤周作の世界」って感じ。

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母なるもの

複雑に屈折した生き方を強いられた隠れ切支丹の姿に、自己の内なる投影を見た作者の魂の表白である表題作など全8編。

――裏切り者や背教者、弱者や罪人にも救いはあるか? というテーマを追求する作者が、裁き罰する父なる神に対して、優しく許す“母なるもの”を宗教の中に求める日本人の精神の志向を、自身の母性への憧憬、信仰の軌跡と重ねあわせて、見事に結晶させた作品集。

アマゾンより引用

感想

人間は、とかく草臥れているとき「お母さん」のような絶対的に許してくれる存在を求めてしまうのだと思う。

もちろん「お母さん」といっても人によっては「絶対的」な存在ではなかったりすると思うのだけれど。

一般的に言う「母なるもの」の感じ……聖母マリアとは言わないけれど、子守唄を歌ってくれるような、悪戯をして帰ってくる我が子を、いつまでも待っていてくれるような、そんな存在のものを。

「だよね~。だよね~。そ~だよね~」

そんな風に思ってしまうのだ。

『母なるものは』どれだけ自分が駄目な人間だったかということを、どれだけ「甘えたい願望」があったかということを嫌でも気付かせてくれるような作品集だ。

「だよね」と同意することが、良いのかどうかは分からないけれど。

そしてもこの短編集のもう1つのコンセプトは「さみしさ」だと思う。

信頼している人を騙してしまうさみしさや、物言わぬ動物に語りかけてしまうさみしさ。1人ぼっちのさみしさ……たくさん人がいるのに「自分は1人だ」というさみしさ。

こういう類のさみしさは生きている限り逃れることは出来ないのだろう。

なんだかんだ言いながら「キリスト教信者」であった遠藤周作を、ちょっぴりだが「羨ましい」と思ってしまった。

私は遠藤周作の著作は大好きだが、やっぱり信仰する気にはなれないし、キリスト教……というか宗教じたい、胡散臭いような気がしてしまう。

信仰はないが、それでも「そういうもの」は、あってもいいよいな気がする。逃げ道は、無いよりもある方がいい……って程度のことだけど。

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