『窓際のトットちゃん』は『徹子の部屋』の黒柳徹子のが書いた昭和の大ベストセラー。私自身は小学生の頃に読んだ記憶がある。
今頃になって読んでみようと思ったのは『窓際のトットちゃん』が2023年の冬にアニメ映画化されると知った事がキッカケ。
また「黒柳徹子は発達障害ADHD(注意欠如・多動性障害)だった」って事を知ったから…ってところもある。私は現在、医療型児童発達支援センターで保育士をしているので「今の私が『窓際のトットちゃん』を読んだら違う感想になるのかも…」なんて思ってしまった。
実際、数十年を経て再読してみた感想は子どもの頃の感想とは全く違ったものだった。
窓際のトットちゃん
- 御長寿番組『徹子の部屋』の黒柳徹子が自らの小学生時代について描いた自伝。
- 自由奔放ゆえに地元の公立小学校を実質クビ(退学)になったトットちゃん(黒柳徹子)は小林宗作が創立したトモエ学園の門を叩く。
- 「君は、ほんとうは、いい子なんだよ。」と言い続けてくれた小林先生とトモエ学園の思い出を生き生きと描く。
感想
私が初めて『窓際のトットちゃん』を読んだ時(小学生時代)はトットちゃんが羨ましくて仕方がなかった。
- 電車の学校
- 「海の物とも山の物」が入ったお弁当
- 「遊びの中で学ぶ」と言う楽しい授業
- 「本当はいい子なんだよ」と受容される優しい世界
……など『窓際のトットちゃん』に描かれているトモエ学園の日常は子どもの頃は憧れの対象だった。
だけど大人になって保育士として働くようになったの私が読むと「なるほど…トモエ学園は小学校教育のスタンスではなくて幼児教育なんだ」としか思えなかった。トモエ学園で実践されていることは保育所保育指針や幼稚園教育要領に明記されている内容とほぼ同じ。
- 遊びながら学ぶ
- 季節の行事を大切にする
- 自然とのふれあいを大切にする
- 1人1人に合わせた個別の対応を行う
などは一般的な保育所や幼稚園(最近は幼保一元化で子ども園が多いけど)ではナチュラルに行われていることばかり。実際、トモエ学園の創設者である小林宗作は日本の幼児教育に初めてリトミックを取り入れた人として知られている。
大人になってみて『窓際のトットちゃん』書かれていたことがストンと腑に落ちたし『窓際のトットちゃん』で描かれた世界は過大評価されているかもな…って事に気づいてしまった。
「個性を大切にする教育は大切だし分からなくもないけれど、小学生以降も幼児教育方式で子どもを育てちゃっても大丈夫なの?」と思ってしまった。
その一方で発達障害があったトットちゃんや脳性麻痺だったり低身長だったりと言った障害を持った子だも達にトモエ学園の方向性は合っていたのだと思う。
『窓際のトットちゃん』に登場するトモエ学園はある意味、理想的な学校と言えなくもないけれど、今の日本の体制では無理だよなぁ~とも思う。
トモエ学園は私立小学校なんだもの。お金持ちのセレブしか通えない学校なんだもの。好き勝手出来るよねぇ~って話。当時の日本人にトモエ学園に通える財力のあった家庭がどれくらいいたか…と思うと、手放しで称賛することは出来ない。
……などと、大人視点で読むとツッコミどころのある作品ではあるものの、もっと綺麗な目と心で読むことが出来たなら楽しい作品だし『窓際のトットちゃん』が名作であることに間違いない。
50歳にして『窓際のトットちゃん』を読んだ事で汚れちまった悲しみに身を浸しつつ、せっかくなのでアニメ映画が公開されたら観てみたいな…と思った。