『タクジョ!』は女性タクシードライバーが主人公のお仕事小説。
タクシードライバーは年中人手不足で高齢化が進んでいる印象が強い。実際、私の住んでいる大阪では高齢の男性ドライバーが多くて、若い人は滅多にいない。女性ドライバーのタクシーに遭遇したこともあるけれど、40代以上の方ばかりで「若い女性タクシードライバーがいる」なんて考えたこともなかったけれど最近は新卒でタクシードライバーになる女性もいるらしい。
気楽な気持ちで「へぇ~。若い女性のタクシードライバーっているんだなぁ」と読んでみた。
タクジョ!
- 物語の舞台は東京都江東区にあるタクシー営業所。
- 高間夏子は大学新卒でタクシードライバーとした就職した。女性のタクシードライバーは全体の3%弱。
- 家族や同僚、恋人と関わりながらタクシードライバーとして働く夏子の成長を描く。
感想
『タクジョ!』はお仕事小説と言うよりもヒロイン夏子の成長小説…って感じがした。残念ながら「タクシー業界裏話」みたいなところは少なめ。どちらかと言うと「社会人1年生の奮闘記」的な要素の方が強い気がした。
ヒロイン夏子はNHK朝の連続テレビ小説に登場しそうなタイプの女性。元気で明るくてポジティブシンキング。シングルマザーの母親は紳士服の凄腕販売員なのに性格はおっとり不思議系…って設定も面白かった。
「男性の多い職場で女性が働く」と言うと、とかく苦労話が取り上げられがちだけど『タクジョ!』ではその類の苦労は描かれていなくて「これは良いね」と思ってしまった。
私も若い頃は男性の多い職場で働く女性だったけれど、いわゆる「男職場」って案外女性にとって居心地が良いことがある。
男性の多い職場で働く女性は「会社の宝」みたいな感じで大事にされることもあるし、何より同性が少ないと女性同士は仲が良くなる傾向が強い。本人の性格にもよるので「男性の多い職場は女性にオススメですよ」と軽率に言うことは出来ないけれど「女性の多い職場の面倒くさい人間関係が苦手」って人にとって男性の多い職場はむしろパラダイスと言っても良い。
ヒロイン夏子も自分にとってパラダイス的な職場で一生懸命働いて社会人として成長していく。仕事に家族に恋…成長小説の王道って感じで読んでいて心地良かった。
『タクジョ!』は「感動の名作」って訳じゃないけれど「気楽な感じで元気の出そうな感じのお仕事小説を読みたい」って時にはうってつけの1冊だと思うし、私はけっこう好き。続編も出ているそうなので続けて読んでみたいくらいには楽しく読むことができた。