原因不明の病で30年も寝付いていた柳澤桂子の闘病記録である。
闘病のような、エッセイのような……科学者が書いただけあって、論文のような雰囲気もある、そんな1冊。
「楽しい本」ではないものの、ためになる本であることは間違いない。
ふたたびの生
「この点滴を抜いて下さい」病床で30年、寝たきりとなり、ついに死を決意したとき奇跡は訪れた──。生命科学者が、生を取り戻すまでの胸の内をつづる感動の書。
病床で30年、ついに死を覚悟した。この点滴を抜いてしまえば…。
その時奇跡が訪れた。生命科学者が、介護される者の思いと生を取り戻すまでの胸のうちを綴り、生きていることの意味をあらためて問う。
アマゾンより引用
感想
まず「30年も寝たきりでした」と言う事実が驚きだ。
そして何よりも感激するのは、痛みが極限に達して「死にたい」と思いながらも、それを思いとどまる場面だろと思う。
そんな極限状態にあって人間は自分の中にある倫理観を尊重できるものなのだろうか?
柳澤桂子は「主治医を殺人者にさせてはいけない」と思ったという。安楽死や、尊厳死を望むということは、かならず「手を下す人」が生まれるのだということを私達は忘れてはいけないと思うった。
しかし、こうやって回復した作者の生命力や、医学の力、そして家族の力を考えると、どんなに苦しくても、人間って、やっぱり生きていなくちゃいけないのかなぁ……と思う。
それにしても、書いたってせんないことだけれど、世の中にはたいした病気も知らずに死ぬ人と、そうでない人がいるのは何故だろう?
「病気や怪我からも得るものはある」というけれど、そんなものから得なくったっていいじゃないか。
世の中は不公平で満ちている。私が絶対的な神の存在を信じられない理由はそこだ。
だけど生きていかなくちゃならないのだなぁ。それは目的なのか、生き物の本能なのか、その辺のところはよく分からないけれど。
生の喜びに溢れる素晴らしい作品だと思った。