『サイレントヒル』は2014年に公開されたカナダ、フランス、アメリカ、日本の合作ホラー映画。
コナミから発売されたゲーム『サイレントヒル』を原作に作られていて、ゲームにしても映画にしても続編が作られている。
ホラー系の映画はあまり好きではないので今までスルーしていたけど年末年始にケーブルテレビで放送されていたので録画視聴してみた。
サイレントヒル
サイレントヒル | |
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Silent Hill | |
監督 | クリストフ・ガンズ |
脚本 | ロジャー・エイヴァリー |
製作 | サミュエル・ハディダ ドン・カーモディ |
製作総指揮 | 山岡晃 |
出演者 | ラダ・ミッチェル ショーン・ビーン ローリー・ホールデン デボラ・カーラ・アンガー |
音楽 | ジェフ・ダナ |
公開 | 2006年4月21日 2006年7月8日 |
あらすじ
ダ・シルヴァ夫妻(ローズとクリストファー)の娘シャロンは夢遊病に悩まされていた。シャロンは時折、情緒不安定な状態になり、家を抜け出して徘徊。そして何かに取り憑かれたかのように「サイレントヒル」とつぶやくのだ。
ローズはサイレントヒルという街が実在することを知り、そこにシャロンの症状の鍵があると考え、夫の反対を押し切り彼女を連れてそこを訪ねることにする。
しかし、サイレントヒルは30年前の坑道火災によって多数の人々が死亡した忌まわしい場所で今では誰も近付かない深い霧と灰に覆われたゴーストタウンと化していた。
シャロンはサイレントヒルに向かう途中、女児誘拐犯と勘違いされて女性警官に追わる。その最中、帰り道が突如消え、気が付シャロンも助手席から消えていた。
ローズは市街の捜索し、他の住人への聞き取りなどを進めていく中で不可思議な現象に巻き込まれていく。
霧に包まれる街の描写
私が『サイレントヒル』の映画を見ようと思ったのは、とかく霧が濃い朝はTwitter界隈で「まるでサイレントヒルの世界」と言ったツイートが流れてくるので「元ネタの映画を見なくては!」と言う使命感に駆られてしまったから。
ホラー映画は好きでも嫌いでもないけれど、霧を見て『サイレントヒル』を連想してしまう人がいるくらいだったら観ておいて損はないかな…と思った訳だけど、まぁ確かに映像的には素晴らしかった。
「視界が効かない世界で行動する」って、なんか怖い!
ホラー映画って闇の中で話が進んでいくことが多いのだけど『サイレントヒル』は闇が霧に置き換わっている。一般的なホラー映画と較べると映像はやや明るめなのだけど、得体の知れない感じがしてとても良い。
サイレントヒルは現代設定のはずなのだけど、街の人達にしても装飾品にしてもどこか古めかしくて(古めかしい理由はあとで分かる)、そこがまたホラーの雰囲気を盛り上げていた。
ローズにイライラさせられる問題
「ホラー映画だからそうするしかないんだよ」と言われてしまえばそれまでだけど、主人公ローズの行動にいちいちイライラさせられた。
私も娘を持つ母なので「娘を助けたい」と思うローズの気持ちは理解出来る。だけど、ローズの行動にはどうにも納得出来ない部分が多いのだ。
周囲の意見を無視して突っ走しってみたり、ローズに協力してくれる人の力を利用せずに1人でどうにかしようとしたり。「娘が行方不明になってるんだから気が動転していた」と言っても、ローズの行動は短絡的過ぎて共感出来なかった。
……と書いてはみたものの、ローズが冷静にことを運べる人だったとしたら、もしかしたら話は別の方向に転がっていたかも知れない訳で、短絡的に見えるローズの行動も映画的には必要な要素だったのかも知れない。
「母親が子どものために頑張ってるんだかに四の五の言うな」ってことなのだと思う。ホラー映画には「お約束」が必要で、そこを理解して楽しむ必要があるのだろうな…とホラー映画素人は改めて感じた。
カルト宗教は怖い
ホラー映画が好きじゃない私が夢中になってしまった『ミッドサマー』は北欧の謎宗教集団の村で起こった出来事だったけれど『サイレントヒル』もカルト宗教が大きな鍵になっていた。
カルト宗教はホント怖い。『ミッドサマー』にしても『サイレントヒル』にしても、作り話でしかないけれど「カルト宗教ならやりかねない」って思ってしまうもの。実際、オウム真理教はリアルで事件を起こしている訳だし。
主人公のローズにしても、シャロンにしても大きな意味で語るならカルト宗教の被害者であって、彼女達に否はないのだ。
ラストの考察
映画版の『サイレントヒル』でローズは娘のシャロンを連れて濃い霧の中、自宅に戻る。しかし霧に包まれた自宅には夫の姿はなく、その一方で夫は自宅で妻と娘の帰りを待ち続けている。
ローズとシャロンはサイレントヒルの世界から逃れているように見えて、実は永遠に閉じ込められてしまったのだと思う。
『サイレントヒル』には最初にローズとシャロン、そしてその夫がいた霧に包まれない無い世界と、霧に包まれて狂信的なことが行われていたサイレントヒルの世界が並行世界のように存在していたのだと思う。
ローズ達は並行世界のねじれのような場所からサイレントヒルの世界へと移動し、そのまま帰ることができなくなってしまったのだろう。
アレッサ(=シャロン)は血縁のないローズを母と認め、ローズを必要としたからこそ自分のいる世界にローズを閉じ込めたのだと思うのだけど、それって1人で妻と娘を待ち続けている夫が可哀想過ぎやしないか?
「ホラーってのは理不尽なものなんだぜ」と言ってしまえばそれまでだけど、ローズに力を貸したばかりに火炙りにされて殺されてしまったベネット巡査にしても、ローズの夫にしても自分には何の非もないのに巻き込まれて不幸になるなんて。
なんだか救いがなさ過ぎるんだよなぁ……。
理不尽なラストはホラー映画のお約束なのかも知れないけれど、どうにもモヤモヤするラストだった。私はあまり好きじゃないタイプの作品だけど、こういう路線が好きな人もいるだろうし、雰囲気や絵作りはホラー映画として素晴らしい作品だとは思った。