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虜囚の犬 櫛木理宇 角川書店

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櫛木理宇の作品を読むのはこれで2冊目。前回読んだ『鵜頭川村事件』はミステリ小説が苦手な私でも面白く読めたので、図書館で見掛けた時に「あっ。この人の作品なら読めるかも」と思って手に取っ手みた。

この作品は読む人を選ぶと思う。グロ描写が苦手な人にはオススメしない。そしてどちらかと言うとガチでミステリが好きな人向けだと思う。

そして、なんだかちょっと惜しい感じの作品でもある。

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虜囚の犬

ザックリとこんな内容
  • 元家裁調査官の白石は友人で刑事の和井田から、ある事件の相談を持ち掛けられる。
  • 白石がかつて担当した少年、薩摩治郎が安ホテルで死体となって発見され、彼の自宅には鎖につながれ、やせ細った女性と遺体が発見された。
  • 白石は薩摩治郎についての調査を開始する。

感想

『虜囚の犬』と言う題名からして「監禁事件ネタかな?」と予想出来る訳だけど、監禁事件がテーマ…と言うよりも、虐待とか親子問題の方が大きなテーマになっていた。

とりあえず監禁事件のくだりは描写がグロテスクなので苦手な人にはオススメ出来ない。ただ、昨今のミステリで監禁事件が登場するとたいていグロテスクなので、描写が特に衝撃的…って感じはしなかった。

話のテンポがよくてサクサクと読めるし物語自体も凝っていたけど、個人的には「ちょっとエピソード盛り過ぎかな?」と思ってしまった。

  • 残虐な監禁事件
  • 虐待されて育った子どもが抱える問題
  • 親の代から続く因習と迷信
  • いじめ問題

色々な要素を盛り込み過ぎて1つ1つがボンヤリした印象になってしまっている。

そして狂言回しである主人公の白石の個性がキツ過ぎて、白石を追うべきなのか、薩摩治郎を追うべきなのかが、分かり難い。

白石は薩摩治郎の事件がキッカケで家裁調査官を退職し、薩摩治郎が殺されたことによって事件を追うことになる。

白石はキャリアウーマンの妹のヒモのような生活をしているのだけど、料理上手でイケメン…と言うドラマ化しやすそうで女性ウケしそうなキャラ設定。狂言回しの役割なのに、白石がやたら出っ張ってくるので、白石が出る分だけ肝心の薩摩治郎の印象が薄くなってしまっている。

私はこの作品の雰囲気もテーマも嫌いじゃないだけに「惜しい!」って気持ちで一杯になってしまった。

櫛木理宇の書こうとするものはたぶんウケると思う。映像化しても良さそうだし、目のつけどころも悪くない。だけど全ての要素を詰め込むにしては構成が甘い。どこか一点でも良いから突き抜けるものがないと、人の心に爪痕を残すことは出来ない気がする。

悪くはないけど惜し過ぎた。櫛木理宇の次の作品に期待したい。

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