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犬がいた季節 伊吹有喜 双葉社

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お久しぶりの伊吹有喜。『なでしこ物語』シリーズがイマイチ好きになれなかったので少し遠ざかっていたけれど、今回は青春物と聞いて手に取ってみた。

アオハルだなぁ~

『犬がいた季節』は三重県にある公立高校が舞台で昭和から令和へと時代を追いつつ、高校生達の青春を描いた作品なのだけど、素直に面白かった。

もしかすると伊吹有喜は大河的な作品よりも、現代的な…と言うか、今を生きる人達を描く方が向いているのかも知れない。

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犬がいた季節

ザックリとこんな内容
  • 1988年夏の終わり。三重県にある八稜高校1匹の白い子犬がやってくる。子犬は「コーシロー」と名付けられ、八稜高校の生徒達の手によって代々飼われることになった。
  • コーシローの目を通して八稜高校の生徒達を描く。
  • 昭和、平成、令和へとコーシローが見つめた高校生達の青春物語。

感想

『犬がいた季節』はコーシローと名付けられた犬のがストーリーテラーとなって、多くの高校生達が登場するのだけど、物語の舞台になった八稜高校は都会の学校ではなく、田舎街の学校だった。

私は昔、仲の良かった同僚が『犬がいた季節』に登場した八稜高校近辺の出身で、彼女から聞いた話と重なる部分があったので、その分余計に思い入れてしまったのだけど、単なる青春物…ってだけではなくて「田舎で暮らす若者の閉塞感」のようなものが上手く表現されていたと思う。

高校生達の青春物語…と言っても、どのエピソードも家族の問題か絡んでいたところが面白いと思った。

高校生と言うと、自分の人生の方向を決める大事な時期だけど、田舎に住んでいる高校生って、都会に住んでいる高校生よりも選択肢が少ないことが多い。

もちろん、田舎に住んでいても、両親が理解のある人だったり、家が裕福だったりすると都会の高校生と変わらないのだけど、そうでない場合は都会の高校生に較べて選択肢が圧倒的に少ないのだ。

八稜高校の様子は同僚から聞かされた高校生活そのもの…って感じで感動を覚えた。それだけ伊吹有喜がしっかり描写している…ってことだ。

バラ色の高校生活ではなく、それぞれにちょっとした問題を抱えた等身大の高校生の青春…って感じ。

連作短編形式になっていて、どのエピソードも面白かったのだけど感動的だとか、一生忘れられない…ってほどではない。ただ、どの子もみんな応援したくなるような真っ直ぐな人間で読んでいてとても気持ちが良かった。

この作品の弱点をあえて突っ込むとすれば、その時代その時代の風俗が盛り込まれているので、その時代を生きた人は面白いと思うのだけど、そうでない人には「ふ~ん」って感じになってしまうところだと思う。正直、ちょっと時代エピソードを盛り込み過ぎた感はある。

それはそれとして、伊吹有喜は1作ずつ着実に上手くなってる。『彼方の友へ』は直木賞候補で終わってしまったけれど、いつかきっと直木賞を取れる作家さんだと確信している。

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