随分と前に図書館へリクエストしたのが今頃になって手元に届いた。
北朝鮮に拉致されて帰国した蓮池薫さんの書いた『拉致と決断』は新聞か何かの書評だか記事だかを見て「ちょっと読んでみたいかも」と思ったのだけど、読んでみて良かったと思う。
『真実は小説より奇なり』という言葉を地で行くような作品だった。
拉致と決断
恋人と語らう柏崎の浜辺で、声をかけてきた見知らぬ男。「煙草の火を貸してくれませんか」。この言葉が、〈拉致〉のはじまりだった――。
言動・思想の自由を奪われた生活、脱出への希望と挫折、子どもについた大きな嘘……。夢と絆を断たれながらも必死で生き抜いた、北朝鮮での24年間とは。
帰国から10年を経て初めて綴られた、迫真の手記。拉致の当日を記した原稿を新たに収録。
アマゾンより引用
感想
どちらかと言うとノンフィクション系の作品はあまり得意ではないのだけれど、この作品は意外と読みやすかった。
プロの作家さんが書いた小説やエッセイではないので、グイグイ引き込まれることもなければ、サクサク読めるほど読みやすい文章ではないのだけれどそれ以上に実体験の凄さに引きずられてしまった。
しかし意外だったのが、物凄く悲惨な話を想像していたにも関わらず、そこに書かれていた体験記は前向きな生活で「拉致」という酷い経験をしてもなお生き抜いてこられた人が書いたものだと納得させられた。
きっと、北朝鮮に拉致されて「行方不明」とされている人の中には、色々な理由で亡くなっておられる方も多いのではないかと思う。
作者の聡明さと「生き抜こう」と言う意志の強さに感動した。
特に北朝鮮に帰国する際に子どもを残してこなければならなず、夫婦で葛藤したという部分については、人の子の親として胸が傷んだ。
作者の決断も凄いけれど、最終的にそれに従った奥様も凄い。どれだけ辛かったかと思うと、たまらないものがある。
無事に帰国出来た拉致被害者として作者はこれからも色々な活動をしていくのだと思うけれど、あんな大変な苦労をされたのだから、これからの人生はご家族で穏やかに幸せに暮らして戴きたいなぁ……と思った。
色々と考えさせられる作品だった。