私は山崎ナオコーラの作風が好きじゃなくて、前回読んだ『偽姉妹』では「山崎ナオコーラの作品はこれを限りに卒業しようと思う」と書いたくせに、つい手に取ってしまった。
『ブスの自信の持ち方』なんて題名の本を見て、読まずにいられる女性は美人だと思う。美人じゃない女性は「ちょっと読んでみたいな」と気になってしまうじゃないか。
山崎ナオコーラの題名の付け方は天下一品だ思う。
デビュー作の『人のセックスを笑うな』もそうだし『カツラ美容室別室』もそうだ。
日本で「題名付けるの上手い作家選手権」をしたら、山崎ナオコーラは文句なしに優勝すると思う。
ブスの自信の持ち方
- よみもの.comで連載していたコムラをまとめた作品。
- 30回分のコムラが収録されている。
- 題名の通りテーマはブス。
- ただしブスが自信を持つ方法については書かれていない。
- 題名はふざけている感があるけれど、至って真面目な作品。
感想
私。もう何度となく書いてきたけど、やっぱり山崎ナオコーラの作風は合わないみたいだ。
「小説家が書いたエッセイ」を読む時、一般的な人がどういうノリを求めるのかは知らないけれど、私の場合「流石は小説家が書いたエッセイだなぁ」と感心しつつ「小説家って、こんなことも出来るんだなぁ」と、作者の別の顔を垣間見る事を期待している。
なんだろう…『ブスの自信の持ち方』はエッセイと言うよりも、評論文とか意見書に近い気がした。書いてる事は正論なのだけど、なんだか頭の固い大学の先生が書いた文章を読まされているような錯覚に陥ってしまった。
学者が正論を書いて理屈をこねるのは良い。でも作家が同じことをしても面白くないのだ。同じ主張をするにしても、一捻り加えて欲しい。
全編、体験談が多くて、理屈っぽい一般論と「個人的な経験」がごちゃ混ぜになっている点も気になった。
評論文なら理屈っぽい一般論を書けば良いし、作家の書くエッセイなら一般的はともかく個人的な体験をもっと前に押し出していけば良いと思う。
そして何より残念なのが「山崎ナオコーラさんって、実のところ自分のこと本当にブスだとは思ってないんじゃない?」と感じてしまった…ってこと。
そして、もう1つ残念なのは「顔出ししてネットで叩かれた後は精神的にやられたので、顔出しNGにしていたけど、もうそんな事はしません」と書いているのに『ブスの自信の持ち方』の著者プロフィール欄に、山崎ナオコーラの顔写真は掲載されていないのだ。
女性作家でエッセイを沢山出している人…と言うと、林真理子や西原理恵子、姫野カオルコを思い浮かべるけれども林真理子や西原理恵子や姫野カオルコのエッセイって、バランスが良くて上手かったんだなぁ…と再発見した。
主張している事が正しいのと、作品として面白いのは全く別問題。題名のインパクトは素晴らしいけれど私には全く面白いと思えないエッセイだった。