家族で『八月南座超歌舞伎』を観に行ってきた。
私は舞台芸術を全般的に愛している。どれが高尚とか低俗とか、そんなの全く気にしない。みんな違ってみんないい。
娘には彼女が大人になるまでに1度で良いから歌舞伎を観せておきたいと思っていたのだけれど、良い機会があったので乗っかってみることにした。
八月南座超歌舞伎は歌舞伎と初音ミクがコラボした公演。
出し物も『千本桜』がメインだったりして、これなら歌舞伎初体験の娘も取っつきやすいのではないかと。
結論から言うと『八月南座超歌舞伎』は最高だった。
八月南座超歌舞伎
- 超歌舞伎のみかた
- 山三當世流歌舞伎踊
- 今昔饗宴千本桜中村獅童宙乗り相勤め申し候
八月南座超歌舞伎は伝統的な歌舞伎と違って、観客もサイリウムを振ったりする観客参加型の舞台。
ニコニコ超会議で公演していたそうだけど、南座では初めてとのこと。
当日は初音ミク目当てのヲタクよりも、本来の歌舞伎ファンの方が多かった気がする。年配の方は「サイリウム? ナニソレ美味しいの?」みたいな感じで面食らっている人が多かった。
一応、前説的に『超歌舞伎のみかた』と言うコーナーを設けてくれているので、初めての人でも楽しめる親切設計になっていた。
山三當世流歌舞伎踊
歌舞伎には色々な演目があって、宝塚歌劇でショーとお芝居があるように、歌舞伎のもショーとお芝居がある。
『山三當世流歌舞伎踊』は踊りを楽しむ、宝塚で言うところの「ショー」の枠組。
「とりあえず歌舞伎の踊りを楽しんで頂戴」みたいなノリ。出雲阿国がテーマの舞踊で初音ミクが出雲のお国。中村獅童がその恋人の名古屋山三。
紅葉や桜などを背景に豪華な踊りで、歌舞伎初心者でも楽しめる内容になっていた。
休憩時間、娘に「たぶん忘れていると思うので、改めて説明するけれど、あの可愛らしい舞妓さんみたいな女の子達は全員男性だからね」説明したら「あっ!そうだった!」と娘は心底驚いた顔をしていた。
そして、一言。「あんなん可愛過ぎる…」
そう。歌舞伎の女形はホント凄い。私は歌舞伎の女形を「可愛いは作れる」の頂点にいる人達だと思っている。娘にその驚きと感動を伝えることが出来てホント嬉しい。
今昔饗宴千本桜中村獅童宙乗り相勤め申し候
『今昔饗宴千本桜中村獅童宙乗り相勤め申し候』は初音ミクと中村獅童の共演…と言うことで、物凄い映像技術を楽しむことが出来る舞台なのだけど、実のところ歌舞伎の面白いところをギュギュッと濃縮した形になっていた。
ショーの要素が濃くて、悪の軍団はジャパンアクションクラブ張りで側転しまくり、バク転しまくり、バク宙しまくり。
大道具も小道具も「これでもか」と言うほど惜しげもなく使っていた。
ハシゴ登るし、宙吊りもあるしで、とにかく派手な舞台だった。
「超歌舞伎だから観に来た」って人のほとんどは、初音ミクがキッカケだと思うのだけど、最後に観客の心を持って行ったのは中村獅童だった…ってところが素晴らしい。
最後まで観て印象に残るのは初音ミクじゃなくて、中村獅童ってところが流石な感じ。やっぱり、その道のプロは凄いと思った。
まさかの撮影OKタイム
そして、ちょっとビックリしたのは最後に「撮影OKタイム」があった…ってこと。
普通の歌舞伎では考えられないほどの大サービス。中村獅童のノリの良さには心底驚かされた。
以前にも超歌舞伎を観たことがある人達は、サッっとスマホを出したり、一眼レフカメラで撮影していたけれど、私を含め「お約束」を知らない人達はアワアワとスマホの電源を入れた。
「最後に撮影OKの時間がありますよ」ってことを最初に告知してもらえたら、もっとスムーズに撮れたのにな…と少し残念。
サイリウムは絶対に必要
私は事前に「超歌舞伎では観客はサイリウムを振ったりする」と知ってたので、生まれては初めてサイリウムを購入して持って行ったのだけど、実のとろサイリウムを持っている人は観客の3分の1もいなかった。
しかし私はこれから超歌舞伎を観に行く人に言いたい。
サイリウムは絶対に必要。
劇場で販売されているサイリウムじゃなくても良いので、色の変わるサイリウムを必ず持参して戴きたい。
特にラストは「サイリウムありき」の演出になってるし、サイリウムを持っている人の方が断然楽しめる。
私の観た回は本来の歌舞伎ファンであろう年配の方が多かったのだけど、年配の方の反応は様々だった。
- 休憩時間に売店でサイリウムを購入して楽しんでいる人
- サイリウム持って無くても立ち上がって腕を振り上げている人
- 最初から最後まで着席して観ている人
『八月南座超歌舞伎』のよう観客参加型の公演では、楽しんだ人の勝ちだと思う。
年配の方でもサイリウムを振っている人や、サイリウムを持たなくても腕を振り上げている人は本当に楽しそうだった。
超歌舞伎は本来の歌舞伎とは違うスタイルだけど、せっかくお金を払うなら楽しんだ方が得だと思う。
歌舞伎の強かさと底力
「娘に歌舞伎を体験させたい」と言う気持ちで観に行った公演だけど、私も心底楽しませてもらった。
伝統的なものって、生き残っていくのが大変だと思うのだけど、新しいものを取り入れてでも生き残っていこうとする歌舞伎界の人達はホント凄い。
最近、日本のクラッシックはチケットが売れなくて大変とのこと。実際、11月に行く予定のホセ・カレーラスのコンサートでさえ満席にならない状態。クラッシックの低迷は殿様商売を改めず、業界努力をしないところが問題だと思っている。
良いものは良い。だけど、その良さを知ってもらう必要がある。
ボーカロイドと歌舞伎のコラボがキッカケで歌舞伎に興味を持つ人は少なすらずいると思う。少なくとも私の娘は「歌舞伎って案外面白い」と感じている。
『八月南座超歌舞伎』は伝統的なスタイルの歌舞伎では無かったけれど「娘に歌舞伎を観せておきたい」と言う私の野望を叶えることが出来た。
そして、家族全員で楽しい時間を持てたことは何より良かったと思う。
歌舞伎のチケットはけっこうお高いので、気軽に観に行けるものではないけれど、また何かの機会に観に行きたい。