谷村志穂の書く女性は不安定な人ばかりなのだろうか?
それとも、たまたま手にした2冊が、揃ってそんなタイプだったのだろうか?
『シュークリアの海』の主人公はなにやら危なっかしく不安定な女性で、もしも自分の身近にそんなタイプがいたら、ものすごく心配だし、いらぬお節介を焼いてしまいそうな気がする。
シュークリアの海
深く深く海の底に潜ることで空っぽな心を満たそうとするアサコ。誰とでも寝る自堕落なキリ。南の島でフリーター生活をおくるふたりの女たちの毎日は、刺激的で自由で、でも本当は退屈に倦んで少しずつ死んでゆくよう。永遠に続くかのように思われた楽園の日々も、キリのエイズ騒動で終わりがやってくる―。表題作「シュークリアの海」その続編「島は沈まない」で描くアサコの再生への軌跡。
アマゾンより引用
感想
女性特有の……というよりも、むしろ人として。生きていくことへの不安。焦燥感、孤独を感じ感じながら、しかし常に何かを求めているようなそんな状態って、誰もが持っている感覚なのではないかと思う。
少なくとも私には理解できる。
理解はできるが、この作品に登場する女性達のように生きたいとは思わないし、もっとシャッキリ生きていきたい。
2つあわせて1つの物語になる短編小説と、まったく違う話なのだが「不安定な女性」を描いた短編が2つ収録されていた。
私が気に入ったのは表題作の『シュークリアの海』と、その続編の『島は沈まない』。
買い物症候群の女性と、その妹の物語は、好きではなかった。痛みを感じながら生きる人間と、痛みを盾にして生きる人間は、なんとなく違うように感じる。
「じゃあ、その境目はどこなんだ?」と問われたら、満足に答えられないのだけれど。
後味が悪い……というほどではないが読後感はあまり良くない。
この作品に登場した女性達は、どこまでいっても幸せになれないような…そんな気がしたから。
強く生きていってね」と思う反面「たぶん無理だよね。きっと」と思わせるような危うさを残したまま物語が終わってしまったという印象。
話の内容とはあまり関係がないのだが、この本を読んでいたら無性に海へ行きたくなってしまった。
「眺める海」ではなくて「泳ぐ海」へ。
塩の香りとか、身体にまとわりついてくる水の感覚とか、そういうのを懐かしく思い返してしまったのだ。
海水浴なんて、もう何年も行っていないのだが、自分がけっこう海好きだってことを思い出してしまった。
海に行くより、何より、もう泳げなくなってるかも知れないけれどできれば今年の夏は海で泳ぎたいなぁ……と思った。