須賀敦子の未収録エッセイを集めたエッセイ集。
これは私の思い過ごしかも知れないけれど、読書好きの女性で「須賀敦子って大嫌い」って人に出会ったことがないような気がする。
もちろん「なんか気に食わない」って人もいるだろうけれど、なんだかんだ言って人気作家さんだよなぁ。
私の持つ 須賀敦子作品の印象は「明朝体の似合う作品を書く人」である。
ちょっぴり優雅で、だけど理路整然と押さえるところは押さえている文章を書く人だと思う。そこはかとなく上品な文章で、なんか憧れちゃう作家さんの1人だ。
私には死んだって書けないうなタイプの文章なんだもの。
霧のむこうに住みたい
愛するイタリアのなつかしい家族、友人たち、思い出の風景。静かにつづられるかけがえのない記憶の数かず。
須賀敦子の希有な人生が凝縮され、その文体の魅力が遺憾なく発揮された、美しい作品集。
アマゾンより引用
感想
須賀敦子の数ある作品の中でも「美味しそう度」が高い目のエッセイ集だった。
その土地でしか食べられないチーズだの、掘りたてのアスパラガスだの、料理自慢の主婦が作ったラザニアだの。
「うぉぉっ。イタ飯食べたい。ワイン飲みたい」とジタバタしてしまうこと請け合いである。
須賀敦子の作品は、ちょっぴり学術的要素が高いものと、比較的イタリアの生活臭がプンプンしているものがあるけれど、この作品は紛れもなく後者のタイプである。
そして私は、後者タイプの作品の方がどちらかと言うと好きだったりする。
知識だけを得るのであれば、それ相応の本を読めばいいんだもの。生活臭が漂っていながら、上品でかつ、美しい文章ってのは、なかなかお目にかかれない。
私にとってイタリアは、未知の土地なので、死ぬまでに1度は行ってみたいと思う。
須賀敦子のエッセイを読んで、想像したイタリアと、自分の目と耳と肌(舌も?)で感じたイタリアとの違いを検証してみたいなぁ……なんて。
これは須賀敦子の作品を読んで毎回思うのだが、イタリアという土地が素晴らしいのではなくて、たぶん須賀敦子の感性と文章が素晴らしいから、イタリアという土地が輝いて見えるのだろう。
イタリアでなくても、景色が良くて、食べ物が美味しくて、お酒も美味しくて、素敵な人が暮らしている国は、いっぱいあると思うのだ。
たまたま須賀敦子が引っ張った綱の先に「イタリア」がぶら下がっていたというだけのことではないかと……
ああ……それにしても美味しいチーズでワインが飲みたい。