基本的に重松清の作品は、どこか胡散臭くて信用ならないと言うか、生理的に受け付けないと言うか、とにかく好きではない。
主義主張は理解できることが多くて、この作品も「言いたいことはよく分かる」が、好きかどうかを聞かれたらNOとしか言えない。
だけど無視出来ない何かがあるのが。重松清の魅力だと思う。
ビタミンF
38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉に抵抗感がなくなった。40歳、中学一年生の息子としっくりいかない。妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そう呟いた……。
一時の輝きを失い、人生の“中途半端”な時期に差し掛かった人たちに贈るエール。「また、がんばってみるか——」、心の内で、こっそり呟きたくなる短編七編。直木賞受賞作。
アマゾンより引用
感想
ありふれた家庭の、ありふれたお父さん達のお話で、ものすごくリアルで「ああ、分かる。分かるよ」と頷きたいようなお話ばかりだった。
お父さん達が立派でないところがとても上手く表現されていたように思う。
家族を愛してはいるものの、だからと言ってテレビや小説に出てくるような「素敵なパパ」ではなくて、「父であること、夫であること」に草臥れながらも、ちゃんと自分の使命をまっとうしようとしている、日本の良きお父さん達。
ここまで書くと誉め過ぎかも知れないが「オスの悲哀」のようなものを感じた
家庭の中で父というポジションは、どうしても母のそれよりもオザナリな位置に置かれていて、家族を愛しているのに、いまいち家庭の中に自分のポジションを確立できていない男達の切なさなんかも出ていたように思うのだ。
妻にも負けないくらいに子供を愛しているだろうに、彼らの愛はダイレクトに届いていないような……というあたり。
「上手いこと書くなぁ」と感心させられたのだが、読み物としては楽しめなかった。
リアリティに溢れるがあまり、全体的に貧乏臭い印象があるのだ。
湿っぽいというのかウジウジしているところも好きになれない。それと、中途半端に説教臭いところも苦手である。
文句ばかり並べているが、しかし重松清は私にとって「父性」を感じる三大作家さんの1人である。
「好きになれないから読まない」のではなくて、これからも、ぼちぼちと気だるく追いかけていくだろうと思う。