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スクラップ・アンド・ビルド 羽田圭介 文藝春秋

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第153回芥川賞受賞作。ピース又吉の『火花』と共に受賞して何かと話題になった作品。早速図書館に予約して、やっと順番がまわってきた。

羽田圭介の作品は初めて読んだ『メタモルフォシス』の印象が強くて、私の中で「あの作品を書いた人が介護をテーマに書いたとなると、さぞ壮絶な話なんだろうなぁ」と期待値を上げ過ぎてしまっていたようだ。

正直そこまで楽しめなかった。どうせならこちらを先に読みたかったな……と後悔しきり。

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スクラップ・アンド・ビルド

「早う死にたか」毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。

日々の筋トレ、転職活動。肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して……。

アマゾンより引用

感想

『メタモルフォシス』を書いた人と同じ人が書いた作品とは到底思えないような作品だった。もちろん羽田圭介はそれだけ多才と言うことなのだとは思う。

「介護がテーマ」と聞いていたけれど、無職の主人公が介護する相手は介護と言っても介護レベルで言うなら「要支援」程度で寝たきりと言う訳ではない。

言うなれば「手のかかる老人」ってところ。まぁ、だからと言ってそれをあげつらうつもりはない。

私自身「手のかかる老人」には散々悩まされているので主人公や家族のイライラは理解出来る。

主人公はブラック企業を退職して就職活動中の若者。性格は真面目でストイック。

自分勝手なところがあるものの「人間だもの」と言うレベル。主人公は「早く死んだ方がいい」と言う祖父の寿命を縮めてやろうと決意する。

祖父が1人で出来る事にも手を出して、優しく介護しているフリをして祖父を萎えさせて早く死なせよう……と言う話。

私は「なんて残酷で面白いテーマなんだ!」とワクワクした。

しかし私の期待とは裏腹に意外と真面目でちゃんとした話だったのだ。悪い話ではないけれど、私が求めていた物はコレジャナイ。

主人公の成長小説とも言えるような作品なのだけど、オチは意外とアッサリしていて肩すかしを喰らった感じ。

羽田圭介は「あえて」モヤモヤ感を残したラストにしたのだろうけれど、当初に掲げた主人公の目的が「合法的な祖父の殺害」と言う、残酷なものだっただけに「えっ? それで終わりですか?」と言う気持ちで一杯になってしまった。

リアルと言えばリアル。人生も介護も、そうスッキリは解決しないのだから。

感心したのは『メタモルフォシス』とは全く違った方向から書かれた小説だったって事。

だけど私は『メタモルフォシス』の方がギラギラしていてずっと好きだ。

『メタモルフォシス』と『スクラップ・アンド・ビルド』の共通点は「途中まで面白かったのだけどオチがモヤモヤする」ってところだ。

羽田圭介は文章力のある人だと思うので、もっと痺れさせて欲しいな……と今後に期待したい。

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