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お師匠さま、整いました! 泉ゆたか 講談社

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前回読んだ『髪結百花』が良かったので続けてもう1冊読んでみた。

『お師匠さま、整いました!』は泉ゆたかのデビュー作で第11回小説現代長編新人賞受賞。一応、時代小説枠。

私はどちらかと言うと時代小説が苦手なのだけど『髪結百花』が大丈夫だったので、今回もいけるかな…と。

お師匠さま、整いました!

「一応、時代小説枠」と書いたのは「時代小説と言えば時代小説だけど、そこまでガチな時代小説ではないよ」と言いたいだけの話。

本格的な時代小説好きには物足りないかも知れないけれど、時代小説が苦手な人なら楽しめると思う。

亡夫の跡を継いで寺子屋で子ども達に勉強(専門は数学)を教える師匠と弟子の物語。一言で言うなら「俺の屍を越えてゆけ!」ではないけれど、弟子が師匠を越えて成長していく過程が描かれている。

お仕事小説とも成長小説とも言えるノリ。舞台は江戸時代だけど、文体は軽めで読みやすいので現代小説を読むのと同じ感覚で読む事が出来た。

題名になっているお師匠様(桃)は15歳のときに60歳近い算術家の夫に嫁いでいる。

夫の死後、桃は1人で寺子屋を切り盛りしていて、その中で鈴と春と言う才能に恵まれた少女の師匠となる。師匠と弟子、それぞれが成長していく姿が生き生きと描かれていて、今までになかった時代小説と言って良いと思う。

ただ個人的には前回読んだ『髪結百花』の方が圧倒的に面白く感じた。

「デビュー作だから色々と行き届いていない」と言う部分もあるかと思うけれど、ヒロイン達の人となりがイマイチ好きになれかったのが敗因。

頭の良い人にありがちな傲慢さとか、感じの悪さを描かれていている…と言うことで、ある意味、仕方がないとは思うのだけど、どうにも可愛げがなさ過ぎると言うか。

ヒロイン達は様々な経験を経て成長していくので「鼻っ柱が強いだけの娘だったあの子がこんなに立派になって…」みたいな流れになっていくものの、もう少し可愛く描いてあげても良かった気がする。

ただ「弟子が師匠を越えていく姿」は感動的だし、学問(算術)に邁進する弟子達の姿は素晴らしいと思った。

ただ「新しい形の時代小説」と言う意味では評価したい。

この作品についてはイマイチ好きになれなかったけれど、2作目ではグッっと面白くなっているので、泉ゆたかは作家として絶賛成長中の人なのかも。

泉ゆたかの新作は今後もチェックしていこうと思う。

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