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笑い三年、泣き三月。 木内昇 文藝春秋

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戦後の浅草が舞台の群像劇。私はいまいち楽しめなかった。

……と言うのも木内昇の作品ってだけで読む前からハードルが上がっていたのだと思う。

木内昇はこの作品で3冊目だけど、前回読んだ『櫛挽道守』が面白かったので「この作品も面白いに違いない」と言うところからスタートしたのが間違いだった。

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笑い三年、泣き三月。

昭和二十一年、浅草の劇場・ミリオン座に拾われた万歳芸人の善造、活字好きな戦災孤児の武雄、万年映画青年の復員兵・光秀。

年齢も境遇も違う三人と財閥令嬢を自称する風変わりな踊り子のふう子は共同生活を始める。

戦争で木端微塵になった夢や希望を取り戻しながら、戦後を生き抜く人々を描く傑作長編。

アマゾンより引用

感想

私の勝手な思い込みかもしれないけれど、木内昇は群像劇よりも1人の人間を掘り下げるタイプの作品の方が向いているもではなかろうか。

根津の遊郭が舞台の『漂砂のうたう』を読んだときもコレジャナイと思ってしまったのだけど、その時の感覚に少し似ている。面白くない…とまでは言わないけれど、激しく物足りないのだ。

売れない芸人、戦災孤児、ストリップ小屋で踊る踊り子、復員兵…とメインを張れるほどの登場人物がワンサカ出て来るのだけど、どの人物も薄味気味に仕上がっている。

全員、味わいのあるキャラクターで魅力がないわけではないのだけれど、思い入れて読むほどガツンとくるキャラが1人もいなかった。

戦後の雑多な雰囲気を描くのにあえてそうしたのかも知れないけれど、なんだか残念な感じ。

大人の中に子どもが交じる…と言うオイシイ設定なのに子どもがちっと子どもらしくなくて、大人みたいでリアリティが無い。

「当時の子どもは現代の子どもよりしっかりしているんだよ」と言われてしまえばそれまでだけど、正直言って「これだったら子どもにする必要は無かったのでは?」と思ってしまった。

子どもの設定を活かしきれていないのだ。

ひょんなキッカケからひとつ屋根の下で他人同士が暮らす…と言う設定は嫌いじゃないけど、それぞれが勝手に生きている感じがした。

「戦後の混乱期なんてそんなものさ」と言われたらそうだと王のだけど、縁あってひとつ屋根の下で暮らすのだったらもう少し何か感じるものがあっても良かったのではなかろうか。

私はいまいち楽しめなかったけれど、映画化したら映える作品だと思う。映像的には面白いし癖のある役者さんが演じたら薄味だと感じた登場人物達もまた違った印象になりそう。

3冊目の木内昇作品はいまいち楽しめなかったけれど、次の作品が出たらまた読んでみようと思う。出来れば次は1人の人間の一生を追うような感じの作品でお願いしたい。

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