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櫛挽道守 木内昇 集英社

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物語の舞台は幕末。木曽の山深い里で「お六櫛」と言う、飾り櫛ではなく髪をすいたり地肌の汚れを取ったりする櫛を作る職人の里に生まれた娘が主人公。

私は時代物は苦手なのだけど面白過ぎていっきに読んでしまった。

有吉佐和子の時代小説を思い起こさせるような骨太な作品。

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櫛挽道守

幕末の木曽山中。神業と呼ばれるほどの腕を持つ父に憧れ、櫛挽職人を目指す登瀬。しかし女は嫁して子をなし、家を守ることが当たり前の時代、世間は珍妙なものを見るように登瀬の一家と接していた。

才がありながら早世した弟、その哀しみを抱えながら、周囲の目に振り回される母親、閉鎖的な土地や家から逃れたい妹、愚直すぎる父親家族とは、幸せとは…。

アマゾンより引用

感想

女が櫛を梳く事がタブーとされた里で櫛職人として生きる道を選んだ女の半生と聞いていたので、朝の連続テレビ小説のヒロインのようにイケイケな感じの主人公かと思っていたら、ちっともそんな感じではなかった。

主人公は「櫛を作りたい」という自らの欲に忠実ではあったけれど、どちらかと言うと不器用で控えめ。今の言葉で言うならば「喪女」そのものという感じ。

時代物でありながら、ある意味普遍的なテーマを描いているようにも思えて好感が持てた。

……とは言うものの物語の舞台が現代ではないというのは重要で、主人公以外の登場人物達もなかなか自分の思うようには行きられない。

特に面白かったのが主人公の妹の喜和の生き方。

喜和はなかなか美しい娘で、自らの力で家を出て行く。なのに結局彼女の行き着いた先は自分の母親と同じような道だったというあたりが、たまらなく切ない。

特にラスト近くで姉妹が心を通わせる場面は素晴らしくて、思わず泣いてしまったほどだ。

物語の筋書きの面白さもさることながら、登場人物達はそれぞれ共通の目標を持っているところが面白いと思った。

それは「自分の居場所を作る」ということ。

要領よく生きていそうな喜和や、主人公の登瀬の夫でさえ家族の中で疎外感を感じ、自分の居場所を確保しようと足掻いていたというところが面白いと思った。

2014年はまだ2ヶ月しか経っていないのでなんとも言い難いけれど、この作品は今年読んだ本の中ではダントツで面白かった。

図書館で借りたけれど、読後大急ぎでアマゾンでポチってしまったほどだ。

借りた本なのでいっき読みしただけなのだけど、手元に置いてじっくりと読み返してみようと思う。

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白い木蓮の花の下で
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