『ざらざら』は働く独身女性の恋を描いた短編集。
川上弘美が女性受けする理由の全てが詰まっていると言っても過言ではないという1冊。
「なるほど…流石だ」と唸ってしまった。もっとも私は彼女の描く世界が好きじゃないのだけど。
ざらざら
風の吹くまま和史に連れられ、なぜか奈良で鹿にえさをやっているあたし(「ラジオの夏」)。こたつを囲みおだをあげ、お正月が終わってからお正月ごっこをしているヒマな秋菜と恒美とバンちゃん(「ざらざら」)。
恋はそんな場所にもお構いなしに現れて、それぞれに軽く無茶をさせたりして、やがて消えていく。
おかしくも愛おしい恋する時間の豊かさを、柔らかに綴る23の物語のきらめき。
アマゾンより引用
感想
まぁ、しかし。川上弘美って上手いと言えば上手い。
川上弘美は恋愛を描くのが上手いと言うよりも、むしろ女性の1人よがりな感情の起伏を描くのが上手いのだと思う。
男性が読んだらムカつく女が多いんじゃないかなぁ。私が読んでもムカつく訳だが。
セックスが好きで、傷つくのが嫌いで、言い訳が大好き。現実世界を生きる人間なら、誰しもそういう部分はある訳で、リアリティがあると言えばそうなのだけど、どうも私は好きになれない。
作品の中で強いて気に入ったのを上げ挙げるとすると、結婚できない2人の女性(友達同士)が、2人で「裸エプロン」をして1日を過ごす話と、成熟しきっていない女子高生の友人同士の話。
どちらも恋愛よりも女2人の関係が面白いと思った。
私は川上弘美の描くものを「そこそこ上手い」と思いながら、どうしても好きになれないのは、彼女の描く女達は都合の良い世界に生きているからだと思う。
彼女達はみな自由過ぎるほど自由な人間なのだ。
自分のことだけ考えていれば良い……という恵まれた人々。彼女達に親とか兄弟とか、そういった煩わしい人はいない。
「自分さえ良ければいい」という状況に生きている人達なのだ。そんな人達に「人生の切なさ」などを語られてもピンとこないのだ。
あまり好きではないのだけれど作者の作品を読むと、あれこれと考えさせられる事が多くてそういう部分においては意義深い。
そして私は「作者の描く世界が嫌い」と公言して憚らないが、それは自由過ぎるほど自由な…恵まれた女達に対する僻みがあるからだってことも承知している。
川上弘美の書く物は長いスパンで気が向いた時にでもトライしたいと思う。